「...んっ..」
ゆっくりと目を覚ますと、見覚えのある部屋に居た。
頭痛のする頭で現状を把握しようと必死に考える。
私の体にはタオルケットが掛けられていて、頭の下には少しゴツッとしてて温かいなにかがある。
手で確認するとそれは誰かの膝で、そして私の顔に覆い被さる影の持ち主のモノだと言うことは明らかだ。
起き上がろうにも膝を貸してくれてる彼も寝てる。
俯いてる彼の顔が意外にも近くてドキドキする。
眠る顔は昔と変わらないんだね。
長くてカールした睫毛、つるりとした綺麗な肌、薄い唇。
私と離れた頃より大人になった柊は色気がかなり増してる。
こんなに綺麗な柊なら、女の子達も放っておかないよね。
柊は今までどんな恋をしてきたんだろうか?
私の知らない柊、こんなにも近いのに凄く遠くに感じてしまうの。
手は届くのに遠すぎる。
ゆっくり伸ばした手は、柊の頬に触れる瞬間にピクッと止まる。
「...っ..んぁ、起きたのか?」
ゆっくり開いた柊の瞳は私を直ぐに捉える。
「...あ..う、うん、今目が覚めた」
慌てて伸ばしていた手を戻した私は曖昧に答えた。
「具合はどうだ?少し温いな」
体を起こした柊が私の額へと手を伸ばした。
「...そう?少し怠いけど大丈夫だよ」
「...ちょっと待ってろ」
柊はそう言うと私の頭を持ち上げて、立ち上がるとゆっくりとソファーに下ろしてくれた。
「...うん」
見上げたまま頷くと、
「良い子だ、すぐ戻る」
優しく笑うとそう言って頭を撫でて部屋から出ていった。
一人になった部屋。
ゆっくりと静かに体を起こしてソファーにもたれた。
見渡した部屋はやっぱり見覚えのある場所で。
ここは柊達の溜まり場だ。
柊が公園からここへ連れてきてくれたんだ。
頭が重いのは柊が言うように熱が有るからだろうか?
迷惑かけちゃったな。
少ししたら帰らなきゃ。
きっと、咲留だって心配してるはずだもん。