あの日あの時...あの場所で









混雑する食堂は、とても賑わっていた。


ここでもやっぱり注目の的で...はぁと溜め息をつく。




「豪さん、こちらです」

豪の名前を呼ぶ声に視線を向けた。


混雑する中で一ヶ所だけ誰も座っていないテーブルがある。


その側にはヤンキー君達が数名居て、豪の名前を呼んだ人はその中のオレンジの髪の男の子だった。


豪は迷う事なく、彼等の元へと歩いていく。



「友達?」

と聞けば、

「ああ、そんなもんだ」

と答えてくれた。



テーブルまで行く豪は私を抱っこしたまま椅子に座った。


いやいや、降ろそうよ。


豪の膝の上に横抱きに座ってる感じになってるのは、頂けない。



「なに食べますか?」

オレンジ君、違和感なく話しかけてくるのは可笑しいでしょ。


「俺はA定食、瑠樹はどうする?」

豪もどうして普通なのよ。


どう見ても可笑しい体勢でしょうよ。


「いや、まず、降ろそうか」

咲留みたいに、抱っこ好きになられても困る。


「えっ?降りんのか?」                               えっ?ここで不思議そうな顔をする意味が分かんないんだけど。


「降りるし。って降ろして」

落ちないように私の腰を抱くパンパンと豪の腕を叩いた。   



「...チッ、仕方ねぇ」

舌打ちとか可笑しいよね?


取り合えず、なんとか隣の席に降ろしてもらうことが出来たので、何も言わないけどさ。



「あ...あの、何が良いですか?」

オレンジ君が恐る恐る聞いてくる。

その声にはっ!と我に返ったら、周りに居たヤンキー君達は、私と豪のやりとりに唖然としてた。



「...えっと..じゃ、オムライスをお願いします」

配膳口の上に書かれてたメニューからオムライスを選んで伝えた。



「分かりました」

頭を下げた彼は食券を買い走っていく。




「良いの?」

彼に任せちゃって?の意味を込めて豪を見る。


「ああ。いつのも事だ」


「そっか、後でお金渡さなきゃ」


「いい、先に渡してある」


「えっ?豪が? 」


「ああ。だから、心配するな」

私の髪をゆっくりと毛先まで撫で付けた。


大きくて温かい豪の手は嫌いじゃない。