あの日あの時...あの場所で






「...誰ですか?」

声は震えてたと思う。

相手は誰だか予想できてたけど、聞かずには居られなかった。


『富田だけど、分かる?』

「...うん」

『具合が悪くて休んでる所悪いんだけど、あんまり時間がないから単刀直入に言うね』

彼女の言葉を聞きたくないと思った。


なのに、彼女は私の反応を待たずにその言葉を告げた。


『瑠樹ちゃんさ。そろそろ豪を解放してあげてよ。豪って瑠樹ちゃんのお兄さん達に頼まれて面倒見てたんだよね?そろそろ解放されたいって言ってたし。ほら、瑠樹ちゃんが側に居たら豪だって自由がないしさ。佐奈もこうやって帰ってきた事だし。迷惑かけるのそろそろ止めて欲しい』

「...それって、豪が言ったの?」

胸が苦しくて頭が痛くて、もうどうして良いか分かんない。

彼女の言うように、豪は咲留達に頼まれたから仕方なく私の側に居たんなら、解放して上げないといけない。


でも...豪は私を好きだと言ってくれたよ。

今は頼まれたからじゃなく、豪が守りたいからだって。



『そんなの当たり前じゃない。じゃないとこんな話、転校してきたばかりの私が知るわけないし。瑠樹ちゃんて可愛いからチヤホヤされるのに慣れてて、相手の迷惑とか分かんないのかな。だったら、今が豪を解放する機会だよ』

「.....」

『私、豪が好きだから、貴方の存在が迷惑なの。だから、もう豪には構わないでね。そしたら、豪も目を覚ましてくれるから』

彼女の言葉は刺の様に私の心に刺さった。



『瑠樹ちゃん、分かってくれた?豪にとって貴方の存在は迷惑なのよ『佐奈...何してる?』あ、なんでもないよ』

彼女の声の向こうに聞こえた声は豪の声。

そこで通話が切られた事で、私はその場に崩れ落ちた。



「...豪..」

もうどうして良いか分かんないよ。

私って豪にとって迷惑な存在だったの。


富田さんに話したの?

咲留達に頼まれたから仕方なく面倒見てるって。


豪は優しいから言えなかったのかな。


「...ごめんね、豪」

豪の告白にも返事を返せない私は、要らない存在だったのかな?


ポロポロと流れ落ちる涙。

私、自分のことしか考えてなかったね。


豪の側が心地よかったから甘えすぎた。





彼女が帰ってきて、豪は思い直したんだね。

私じゃなくて彼女の隣に居ると。