あの日あの時...あの場所で





「瑠樹、顔色悪いぞ」

私の顔を見て手を伸ばしてきた豪の手を思わず避けた。



「ごめん...大丈夫だから。豪、富田さんと帰ってあげて」

空を切った手に顔を歪めたままの豪にそう言って微笑んだ。


「な、何言ってんだ。具合悪いなら送ってく」

「ううん、咲留が来てくれてるから良い」

首を左右に振った。


「良いって言ってるんなら良いじゃん。私と帰ろう」

富田さんはニッコリ笑って再び豪の腕にしがみつく。


「...離せ。瑠樹、門まで送る」

豪は富田さんを見ないまま私だけを見据える。


「.....」

何を言うのももう辛くて、下唇を噛み締めた。



「良いって言ってんじゃん」

そう声を張ったのは梅。

いつも物静かな彼女が出した声に桃も楓も目を丸めた。

梅は豪を冷たい視線で睨み付けている。


「...っ..」

豪は眉間に眉を寄せて梅を見返した。


二人ににらみ合いなんてして欲しくない。



「...行こう、梅」

梅の手を掴んで歩き出そうとした私の耳に届いたのは、


「瑠樹、迎えに来た」

咲留の優しい声。

涙か溢れそうになった。


教室に響き渡る悲鳴。

前の入り口には咲留とちぃ君の姿が。




「良かった来てくれた」

安心したように呟いたのは楓。



「行きましょう」

梅は優しく微笑むと私の掴んでいた手を逆に握り返して、咲留達の方へと連れていってくれる。


「...ありがとう、梅」

と力無く笑ったら、


「もう、そん顔も可愛いわね」

と目を細めた。




「瑠樹、具合悪いのか?」

咲留達の前まで来た私を抱上げてくれたのはちぃ君。


「あ、千景ずりぃ。どうしてお前が先に瑠樹を抱くんだよ」

唇を尖らせて抗議する咲留。


「うっせぇよ。瑠樹は俺の大切な妹だ」

「お前のじゃねぇし」

言い合う二人にクスッと笑う。


なんだかホッとしたから。



「な?瑠樹は俺が良いもんな」

ちぃ君は私の顔を覗き込む。


クハッ...近距離にイケメンフェイスは危険だよ。

破壊力有りすぎ。


恥ずかしくなってちぃ君の肩に顔を埋めた。



「あ~もう、千景狡い」

と叫ぶ咲留は、

「咲留さん、瑠樹は具合が悪いんで早く連れて帰ってあげてくれませんか」

と梅に諭された。