あの日あの時...あの場所で






授業が終わっても、豪と帰る気持ちにはならなくて、6時間目の授業中に咲留に迎えに来て欲しいと連絡を入れた。


どうしても...どうしても豪と二人の空間には堪えられなかったんだ。


彼女の存在が私の中に大きな影を落としてしまったみたいだ。


苦しくて仕方ない。

逃げ出すなんて私らしくないけれど、今のこの空間に居ることに堪えられないんだ。








身の入らない授業はあっという間に終わってしまう。

HRも気が付いたら終わっていて。


「瑠樹、帰るぞ」

ぼんやりしてる私の耳に聞こえた豪の声。


「豪、一緒に帰ろう」

甲高い彼女の声も聞こえてきた。

ズキンと痛む胸。


「離せ、佐奈。俺は瑠樹と帰るんだよ」

立ち上がってる豪の腕にしがみついて上目使いで豪を見上げる富田さん。


「えぇ~帰りも一緒なのぉ。豪の事をどれだけ縛り付けてるのぉ」

刺々しい彼女の言葉に目眩がした。

私が豪を縛り付けてる。



そっか...そうだよね?

豪の優しさに甘えすぎてたのかもね。


「うっせえ。俺は好きでやってるんだよ。つか、マジで離せ」

豪は彼女の腕を引き剥がす。


「良いじゃん、豪のケチ。久し振りなんだから遊ぼうよ」

引き剥がされた富田さんは不服そうに唇を尖らせる。


私はそんな二人を前に顔を上げる事さえも出来ないでいた。


「お前とは遊ばねぇよ。ほら一人で帰れ」

そう言いながらも豪の口調は優しい。

今まで近づいてきていた女の子達なんかとは、やっぱり扱いが違う。

富田さんと豪はやっぱり親しい感じがする。



「んもう、ケチんぼ。昔はもっと優しかったじゃん」

涙目で豪を見上げる富田さん。


「うっせぇ、なんとでも言え」

二人のやり取りが苦しいよ。


お願いだから別の場所でやってよ。

息苦しくて仕方ないの。




「帰ろう、瑠樹」

梅の声がしてホッとする。


「話するなら別の場所でしてください」

刺々しく豪にそう言ったのは桃。


「門の所にお迎え来てるよ、帰ろう瑠樹ちゃん」

楓は私の鞄を鞄から取って微笑んだ。


三人の登場に息苦しさから解放された。



顔を上げた私に三人は微笑んでくれる。


「ん、帰る」

頷いて立ち上がった。