あの日あの時...あの場所で










「瑠樹、具合でも悪いのか?」

豪は私の顔を心配そうに覗き込む。



「ううん、眠いだけかな?」

首を左右に振ってフフフと笑った。


「だったらいいけど、無理すんなよ」

豪は頭を撫でてくれる。

いつもなら安心するその手が、今日は少し切なく思えた。



「じゃ、そろそろチャイムが鳴るから私達行くね」

桃子の言葉に、


「ん。三人ともありがとうね」

と微笑んだ。


「お礼を言われる覚えはないわよ」

梅が綺麗に微笑む。


「いや~ん、瑠樹ちゃん可愛い。笑顔もっとプリーズ」

と私に抱き付こうとした楓は、

「はい、戻りましょうね」

と桃子に首根っこを包まれて引きずられていった。


三人の去っていく背中に、もう一度心の中でお礼を言う。

本当にありがとう。

貴女達が居てくれて、本当に良かった。




チャイムが鳴り響き、日本史の先生が前のドアから入ってきた。

「では、授業を始める」

と始まったのは、安土桃山時代の話。


ノートを開いて黒板に書かれていく文字を写していく。

カリカリと音がする教室。

ヤンキーが大いこの学校でも、比較的に皆授業は真面目に受ける。


おじいちゃん先生の説明を聞きながら、ぼんやりと窓の外へと顔を向けた。


さっきまで良いお天気だった空は、いつの間にか灰色の雲で覆われていた。

今にも泣き出しそうなそれに、切なくなる。


私の心もグレーの何かにモヤモヤと埋め尽くしてしまうんだ。

この息苦しさは何?


富田さんと豪を見てるとしんどくなる。

私にはそんな風に思う権利なんてないのに。


富田さんは私の居ない間もここに座って、豪と過ごしていたのかな?

豪だって、久しぶりの幼馴染みとの再会を喜んでるよね。

彼女に対してぶっきらぼうには話すけど、どこか優しさを含んでるし。


豪にとって富田さんは大切な存在なのは間違いない。

話し掛けてくる他の子に対しての態度とは全く違うしね。



.....何これ?

私、さっきから豪達の事ばっかり考えてる。


アタシニハカンケイナイノニ。



私は豪の何でもない存在なのにね?

豪に返事を返せてない私が、こんな風に苦しくなるなんてお門違いも良いところね。


自分が滑稽で浅ましいとさえ思えた。