あの日あの時...あの場所で







「豪、会いたかったよぉ」

休み時間になった途端に豪の席までやって来た冨田さんは、嬉しそうに豪に抱き着く。

なんだろうな、凄くモヤモヤする。


「離れろ、佐奈」

ウザいとばかりに冨田さんの腕を掴んで引き剥がす豪。

だけど、いつもとは違って優しさが含まれてる。


「んもう!折角の感動的な再会なのに連れないわね」

そんな豪も良いけど、とウインクする冨田さんの視界にはどうやら私は入ってないらしい。

完全に無視の状態で彼女は豪だけを見つめる。


「...何が感動的だ。別に嬉しかねぇ」

冷たくそう良い放つ豪。


「豪に会いたくて帰ってきたのに、何よぉ。」

冨田さんは拗ねたように唇を尖らせて豪の肩にそっと触れる。


...触れないで。


やだ...私、何を思ったのよ。

豪に返事も返せてない私にはそんな風に思う資格なんて無いのに。


「俺は会いたくなかった」

「...それは私が何も言わずに豪を置いていったから?」

冨田さんはそう言うと色っぽい視線で豪を射抜く。



「...チッ..うぜぇ」

不機嫌な豪の舌打ちには戸惑いが見えた。


あぁ...ここに居たくない。


「豪、もう一度私を見て」

冨田さんの長くて白い指先が豪の頬に触れた。


ズキッと胸の奥が痛んだ。

なにこれ...どうして、こんなに苦しいの。


冨田さんを時が止まった様に見つめる豪も見てられなくなって、私はガタンと立ち上がる。


「...どうした瑠樹?」

我に返った豪が私を瞳に写す。


「あ...うん。梅が呼んでるから」

こちらを心配そうに見つめてる三人を指差した。

勘の良い梅は私の事を手招きしてくれる。


豪は手招きする梅を確認してから私へと視線を戻す。


「分かった。一人で出歩くなよ」

「ん。分かってる」

「良い子だ」

豪はゆるりと口角を上げると私の頭を一撫でする。


冨田さんはそんな私と豪に鋭い瞳を向けてる。

だけど、それに気付かない振りをして梅達の所へ小走りで駆け寄った。


.....胸の奥が苦しい。

なんなの?この息苦しさは。




「大丈夫?瑠樹」

梅が頭を撫でてくれる。


「なんなの?あいつ、気に食わない」

楓が豪にベタベタする冨田さんをキッと睨む。


「あの子は要注意ね」

いつも穏和な桃子が険しい顔をしていた。