あの日あの時...あの場所で









「じゃあ、出席を取る」

奥ちゃんが名簿を開いて名前を呼んでいく。


私は落ち着かない感じにソワソワしてしまう。

彼女の向けた視線が気になって仕方ないんだ。


私、彼女に睨まれる様な事をした覚えないんだけど。

どうして、睨まれたんだろう。


頬杖をついて、ボンヤリと正面を見据える。



「どうかしたのか?瑠樹」

隣の豪が声をかけてくる。


「あ、ううん。何でもない」

豪の幼馴染みに睨まれたなんて言えない。


「なら、いいけど。何かあったら直ぐに言えよ」

「ん」

豪は優しいね。


豪に返事をしてから、何となく富田さんに目を向ける。

周囲の人達と仲良さそうに話してる。

さっきのは気のせいだったかな?



席を譲らなかった事を怒ったんだろうか?

やっぱり知り合いの側の方が安心するもんね。

私も転校した来た時は不安だったし。

咲留に言われて豪が側に居てくれたから独りにならずにすんだし。


やっぱり後で豪に言ってみようかな?

富田さんに席を譲るって。


知らない場所に一人で居るよりは、豪の側の方がいいはずだし。


私には桃子も楓も梅も居てくれるもん。



だけど、本当に...それで良いの?

良い子ちゃんになろうとしてる自分に問い掛ける。


やっぱり、豪と離れるのが寂しいと思う私が居るんだよ。

ずっとずっと一緒だったから都成じゃ無くなるのは...ちょっと寂しい。



あぁ、私、どうしたのかな?

なんだか、モヤモヤと変だ。



綺麗に微笑む富田さんから視線を逸らして窓の外へと目を向けた。

ほんと、どうしちゃったんだろう。


私が私じゃなくて、なんだか嫌だ。