あの日あの時...あの場所で






「富田さんは豪の知り合いか?」

教壇の側に戻ってきた富田さんに奥ちゃんがそう聞くと、

「はい。幼馴染みなんです。昔、豪の家の隣に住んでました」

と答えた彼女。

教室はそれにザワザワする。


幼馴染み。

私と柊みたいだね。


だから、豪も嫌がらなかったんだ。


だけど、奥ちゃんと話ながらも豪に熱い視線を送る富田さんに凄く嫌な予感がした。




私の予感は直ぐに的中する。

彼女が転校してきた事で、全てが大きく動き出す事になるなるんだ。








「そうか、じゃあ分からない事は豪に聞けばいい。で、富田さんの席だけど、廊下側の三列目に座ってくれるか?」

奥ちゃんが指差したのは窓際の私達とは正反対の席。


「えっ、あそこですか?」

今までニコニコしてた富田さんの顔は曇る。


「ああ。今はそこしか空いてねぇから」

と言った奥ちゃんに、


「あ、あの、何も分からないから豪の隣は無理ですか?」

と私の座る席を指差す。


えっ?私、移動?

ま、廊下側の席は梅と楓に近いけど。



「あ~ぁ、あの席は...どうスッかな」

困ったとばかりに頭を掻いて私を見る奥ちゃん。


代わるよって言った方が良いよね?


豪の知り合いならそうしてあげた方が...。

だけど、心のどこかで嫌だと思う私が居るの。


「...あ、良い..」

ですと言おうとした私の頭にポンと豪の大きな手が乗った。


「瑠樹は移動しねぇ。っうか、俺がこいつから離れねぇのは分かってんだろうが」

奥ちゃんを睨むと豪はそう凄んだ。


その瞬間に富田さんの顔が悔しそうに歪んだ。

そして、私を射抜くように睨み付けた。

だけど、それは一瞬でほとんどの人はそれに気づいてないと思う。


憎悪を向けられた私以外気づいてないんじゃないかな?



「あ~だよな。富田さん、悪いけど。あの席に座ってくれないかな。豪はお姫様の側を放れたがらねぇから」

なぁ?とニシシと笑う奥ちゃんは富田さんを席に座るように促してから、豪を見る。


「最初からそう言っとけ」

フンッと奥ちゃんを鼻で笑う豪。


渋々歩き出した富田さんは奥ちゃんに言われた席へと向かう。


視線を感じてそちらを向けば、チラリと彼女が私を見ていて、その瞳には嫉妬の炎が燃えてた気がした。