あの日あの時...あの場所で









「...柊、苦しまないで」

唇に押し当ててた俺の指をそっと掴むと瑠樹はそう言った。

やっぱり優しい奴だよな?

俺はどうして、こんな良い女を手放したんだろうな?


ほんと、ガキだった自分が嫌になる。



「瑠樹、友達に戻ってくれるか?お前を傷付けた償いをしていきてぇんだ」

直ぐに元の関係になんて戻ろうと思ってねぇ。

瑠樹を苦しめて傷付けたんだからな。


長い時をかけて償ってくから、側に居させてくれ。



「...ん。そんな風に言われたら断れないでしょ?」

瑠樹は少しだけ困った様に眉を下げて微笑んだ。


「ありがとう、瑠樹」

掴んだままの手をキュッと握った。


「償いなんて要らないけど、友達には戻りたい。柊と歪み合ったままなのは嫌だもん」

可愛い笑顔に胸がドキドキした。

こんなのいつぶりだよ。


どんな良い女を前にしてもこんな気持ち沸いてこなかったってのに。


中学生のガキみたいに、ドキドキして恥ずかしくて、どこか温かい気持ちになる。


瑠樹だから、瑠樹だけが俺にこんな感情をくれるんだ。



微笑む瑠樹に誓う。

もう一度お前の心を取り戻す。


昔みたいに澄んだ瞳で俺だけを見て貰いてぇ。


そのためなら、どんな犠牲も努力も惜しまねぇ。



繋がれた手から伝わる瑠樹の熱と自分の熱が混ざり合う感覚に、口元を綻ばせた。






柊side.end
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