「ば~か、お前はなんにも悪くねぇだろ。だから、んな辛そうな顔すんな」
瑠樹の方に体ごと振り向いて、瑠樹の小さな頭を優しく撫でた。
「...だって...私、なにも知らずに。柊が一人で苦しんでたのに、捨てられたって恨んでたんだよ」
苦しげに顔を歪めたまま俯いた瑠樹はポタポタと涙を膝の上に落としていく。
そんなに苦しまないでくれ。
悪いのは俺だから。
「...瑠樹が俺を恨んで当然だ。お前は悪くなんてねぇ。全部全部ガキだった俺のせいだ。瑠樹を無駄に傷付けて悲しませた...俺が愚かなだけだ」
膝に乗せてあった方の手を痛いぐらいに握り締めた。
今なら、色んな道を模索できたはずだ。
三年前みたいに瑠樹を突き放す事だけを短絡的になんて考えねぇ。
どんなことをしても、側に居ることを選んだはずだ。
瑠樹を突き放して、その寂しさを紛らせる為に寄ってくる女を捌け口になんてしなかった。
中学生の俺はてんでガキで目先の事しか考えてなかった。
落ちて、汚れて、汚くなった俺には、今の瑠樹が眩しくて仕方ねぇよ。
だってこいつは、昔と変わらず綺麗で優しくて温ったけぇ。
「...柊も苦しんだじゃん。もう自分を責めないで。三年前は私も柊も子供過ぎて大人に振り回されただけだよ」
「...ああ、大人に振り回されたな?」
瑠樹の綺麗な瞳に俺が写ってる。
本当はそんな資格なんてねぇかも知れねぇのに、瑠樹は真っ直ぐな瞳を俺に向けてくれるんだ。
それがどんなに嬉しい事なのか、瑠樹は分かってるか?
俺の手は色んな物で汚れちまったけど、瑠樹に伸ばしても許されるんじゃねぇかと思わせてくれるんだ。
「...柊、話してくれてありがとう。胸の支えが取れた。ずっとね?どうして柊は私と決別したんだろう?って思ってたから...ずっと胸に残ってたの」
瑠樹は頬に伝う自分の涙を手の甲で拭うと愛らしく微笑んだ。
「いや、こっちこそ聞いてくれてありがとう。瑠樹をヤクザなんかと関わらせたくなくて、危険なことにも巻き込みたくなくて、突き放した癖に瑠樹の事は忘れらんなかった。俺はいつかこんな風に話す機会を望んでたんだと思う」
突き放して捨てたはずなのに、瑠樹の事は片時も忘れたことはなかった。
とっても大切な存在だったから。
俺が傷付けてる癖に、いつも会いたいと願ってた。
矛盾してるよな?



