あの日あの時...あの場所で











瑠樹の顔が歪む。

何かを悟ったかの様に、目を瞬いてゆっくりと俺を見た。


「...もしかして...それが理由?お父さんがヤクザだったから?」

ああ...瑠樹には俺の考えなんてお見通しなんだな?


「...ああ。ヤクザの息子の俺がお前の側になんていらんねぇと思った」

浅はかな考えだけど、瑠樹をこっちの世界に巻き込みたくねぇと思った。


綺麗な瑠樹を俺が汚しちゃいけねぇって。



「...バカだよ。どうして一人で決めちゃうのよ」

瞳に涙を溜めた瑠樹は下唇を噛み締めた。


小さな肩が小刻みに震えてる。



「...ごめんな?相談しようとも思った。だけど...そう思ってた時に持ち上がった。高校生になったら俺が若頭になることが....もうダメだって思った。ヤクザの息子ってだけでも、瑠樹の側に居られないって思ったのに、若頭だぜ?」

自嘲的な笑みを浮かべると、俺は前髪をかき揚げた。

若頭になる俺には瑠樹の側に居る資格はねぇって....。


だから、瑠樹から離れようと決意したんだ。



「ううん、私の方こそごめん。柊が苦しんでる事に気づいてあげられなかったね。やっぱり離れちゃダメだったんだね?私がアメリカになんて行かなきゃ、柊を一人で苦しめずにすんだのに...」

そう言うと瑠樹は瞳から大きな粒をポロリと溢した。


ほんと、こいつは優しいな?

昔も今も変わんねぇ。


俺がなにも言わずに瑠樹を捨てたってのに、自分が悪いんだと自らを責める。

こんな瑠樹だからこそ、はっきりと別れを告げずに身を引いた。


俺なんか嫌になって、憎んで忘れて欲しかったから。


連絡もせずに自分を捨てた酷い男だと思われたかったんだ。


なのに、こいつは、何もあの頃と変わってねぇ。


優しさも思いやりも、昔のまんまだ。



熱くなる胸。

今すぐ抱き締めたいと欲が出てくる。