あの日あの時...あの場所で








「子供は何時だって振り回される。大人の自分勝手に。あんた、俺達を選ぶと言う事が自分の家族を捨てることだと分かってんのか?」

誰かの不幸の上に成り立つ幸せなんてたかがしてれる。

どうして、その事に気付かねぇ。


「...そうか..お前は優しい奴なんだな。人を思いやれる立派な人間に育ってくれてて嬉しい」

上加茂は俺の質問を無視して嬉しそうに微笑んだ。


「ああ"?」

こいつなんだよ。

今、そんな話してる場合じゃねぇだろ。



「妻と息子の事は心配はない。随分と前に二人は事故で亡くなってるんだ。だから、お前達二人を迎え入れるのに何も障害はねぇぞ」

上加茂から聞かされた言葉に目を大きく見開いた。

こいつの家族はもう...居ねぇのか。


「...あ、わりぃ」

なぜか、申し訳無い気持ちに苛まれた。


上加茂にとって愛する女じゃなかったとしても、戸籍上の妻だった女とその間に出来た息子を亡くした悲しみは少なからず有ったはずだから。



「いや、良いんだ。もう6年も前の話になるしな。だから、安心して俺の家族になってくれねぇか?お前達を今度こそ幸せにしたいんだ。今なら俺達が家族になることを反対する連中も居ねぇしな」

俯かせた俺の頭をガシガシと少し乱暴に撫でた手はとても大きくて、今まで俺が知らなかったモノだった。


「柊、私を許さなくても良い。それでも良いから彼を父親と認めてあげて。今さら私が何を言ってもダメなのは分かってるわ。彼と再会するまで貴方には辛い思いをさせ過ぎたもの...弱い私が貴方をずっと苦しめ続けてきた...ごめんなさい...ごめんなさい」

母親は大泣きしながら、その場に崩れ落ちた。


いつも気丈だった癖に、こんなにも弱い人だったのか?


俺の中では処理しきれない思いがグチャグチャに渦巻いていた。



「直ぐに俺たちを許してくれとは言わねぇ。少しずつ親子をやり直して行こう。一緒に暮らしてもお前を縛ったりするつもりねぇし、好きなように生きりゃ良い。ただ、側でそれを見守らせてくれねぇか?」

優しさを溢れださせた上加茂の言葉に、俺の瞳は揺れる。


本当に...もう一度家族としていきていけるんだろうか?


なぁ?瑠樹、お前ならこんな時どうする?