あの日あの時...あの場所で




俺だけが辛かっただなんて、少女趣味な事は言わねぇ。


だけど、こんな話をどう処理して良いのか分からねぇんだよ。



...瑠樹、俺はどうしたら良いんだ?


俯いたまま、最後に見た瑠樹の今にも泣き出しそうな表情を思い出した。


子供の俺達には、到底理解できねぇ事がありふれてんだな?


俺も瑠樹も、それに振り回されて生きてる。


そうすることでしか、俺達は生きらんない子供なんだな。

自分の無力さに口元に笑みが浮かんだ。




「罪滅ぼしにもならねぇけど、これからは俺達と一緒に暮らそう。幸い今の俺は資産も力もある。必ず守ると誓うから家族になってはくれないだろうか?」

「はっ?」

こいつは何を言ってるんだ?

この男には俺達じゃない家族が既にいるくせに。


胸の奥で怒りの炎が小さく燃え上がる。


勝手なことばっかり言ってんじゃねぇよ。



「柊...私達とお願い一緒に暮らして」

母親にこんなにも真っ直ぐに見てもらえたのはいつぶりだろうか?


ここは感動するとこかも知れねぇけど、今の俺の心には負の感情しかねぇ。


上加茂が望んだ子供じゃなかったとしても、俺と半分血の繋がった子供がいるんだろ?

そいつにはとって上加茂は唯一無二の父親のはずなのに、俺達親子と暮らすと言うことはそいつを捨てるつもりなのか?


無理矢理だと言え妻になった女とその間に生まれた子供を捨て置いてまで、俺達親子に肩入れするなんてどうかしてる。


ククク...大人は自分達の都合の良いようにばっかり生きるんだな?

馬鹿馬鹿しくて笑えるわ。



俺も瑠樹も、見たこともねぇ俺の兄弟も、大人の勝手なこと都合に振り回されてる被害者だな。 



「随分と自分勝手だな?あんた達二人が幸せになることで不幸になる人間の事なんてお構いなしかよ?」

俺は狂ったように笑った。



「...しゅ、柊...」

自分を睨む俺の冷たい視線に戸惑う母親。


「...俺を見捨てといて今さらだろ?」

本当、笑えるわと笑い続ける。


「落ち着け、柊。頼むから落ち着け」

上加茂は俺を宥めようと手を伸ばす。


「触んな」

パシッとその手を叩き落とした俺は上加茂を睨んだ。