あの日あの時...あの場所で







上加茂に裏切られたと思った母親は俺を身籠った事を上加茂に告げる事もしなかった。


一人でひっそりと生み育てた。


俺が生まれた当初は苦しい生活でも幸せだったと母親は言う。

だけど、それならどうしてネグレクトになったんだろうか?



「大きくなるにつれて...柊也に似てくる柊を見るのが辛くなったの。私を裏切った柊也に対しての憎しみを柊に向けてしまった。柊は何も悪くなかったのに...」

母親はそう言って顔を手で覆って泣き出した。

俺はそんな母親を冷めた目付きで見てたと思う。


自分を裏切った男に似た俺に対して憎しみを持ち接する事が苦痛になった母親は家を空けるようになったと言う。


そして、俺に対しての罪悪感を消し去るために男に走った。

寂しさと苦しみをまぎらわせる為に男の温もりを求め続けた。


なんて陳腐な話だと思った。


何も知らない俺は母親の愛情も貰えず捨てられた。

年端もいかない頃から人の温もりさえ知らずに...。



瑠樹に出会ってなかったら、俺は何も知らないままに今も生きてたはずだ。


俺に温もりと無償の愛情をくれたのは瑠樹だけだった。





「っうか、俺をネグレクトするぐらいの憎しみを抱いた男と現れるとかどういう事だよ?」

俺は憎々しげに母親を見て嘲笑った。


失笑するだろ?こんなの。


「...ち、違うの。違うの柊也は...裏切ってなかったの」

母親は顔を上げるとそう言って俺に訴えかけた。


はぁ?なに言ってんだ。


この男はお前を裏切って、好きじゃねぇと言ってた嫁を抱いて孕ませたんじゃねぇのかよ?



「...こいつが他の女を抱いたのは疑い様はねぇんだろ?」

混乱した頭で母親と上加茂に交互に睨み付けた。



「...っ...わ、私が...うぅ」


泣き崩れた母親。



「俺が話す」

上加茂はそう言うと母親の肩を優しく抱き寄せた。


そして、上加茂は俺を真っ直ぐに見据えた。



「確かに嫁は孕んだ。でも、それは...俺に媚薬と睡眠薬入りの酒を飲ませて嫁が一人でやった事だ。情けねぇ話、寝てる間に女に上に乗られて、腰振ってる女に気付いた時は射精した後だったって訳だ」

情けねぇだろ?と苦々しげに顔を歪めた上加茂。


っうか、この体格の大きな男が女にヤられたって事かよ?


俺は信じきれずに疑いの目を向けた。