あの日あの時...あの場所で






「男に狂って、俺なんて居ない存在にしてた女が今更なんだってんだって、思った」

「...っ..」

涙目になった瑠樹は俺の思いの一番の理解者だと思えた。


今も昔も変わらねぇ瑠樹に胸が暖かくなった。


「あいつを無視してるうちに厳つい男が一緒に来るようになって...そいつまで頭を下げ始めたんだ」

見ず知らずの男のはずなのに、どこか懐かしさを感じる男だった。


「仕方なく話を聞くようになって、そいつが俺と血の繋がった男だと分かったんだ」

「...っ..」

瑠樹は息を止めたまま俺を見上げた。


俺はそこから、言葉を止めずに事の顛末を全て話して聞かせた。

止めたらもう言う勇気が出ねぇと思ったから。






あの日を鮮明に今も覚えてる。


厳つい男が涙を流すあの女の隣で、俺を決意を込めた瞳で見てたあの日を....。


「家に、入れてくれないか?」

男が言う。


「今更来られても困る」

冷たく言い放った俺に、すがるような視線を向けたのはあの女。


「...ごめんなさい...ごめんなさい、柊」

「.....」

こいつの涙なんて俺には何の効力ももたらさない。


「話だけ...話だけ聞いてくれないか?」

男が懇願する。

その瞳があまりにも真剣で 無下にも出来ずに俺は渋々二人を部屋へと招き入れた。



流れた沈黙。

狭い部屋には三人の呼吸の音だけが響いた。


男は最後まで聞いて欲しいと言いながら話始めた。



親父だと名乗った男は、俺を捨てた女が唯一愛した男で、名前を上加茂柊哉(カミガモシュウヤ)と言う。


二人が愛し合った当初、上加茂には家同士が決めた許嫁が居て、あいつ...俺の母親との仲を引き裂かれたらしい。


だけど、上加茂も母親も互いを諦めきれずに隠れて愛し合い続けた。


でも、それも長くは続かなかった。


上加茂は親と相手に押しきられ好きでもない許嫁と結婚した。


そして、上加茂の嫁が孕んだ。


母親だけを愛してると言っていた男は、好きじゃないと言ってた妻を抱いていたんだ。


その事にショックを受けた母親は上加茂の前から姿を消した。


そして、その後に母親は俺を孕んでる事を知ったそうだ。



そんな話を今更聞かされて俺はどれにどうしろと言うのか?そう思った