「こうやって、二人で会える日を待ってた...」
柊は大きく開いた両膝に肘を乗せて手を組んで話始めた。
「...ん」
柊も私と話がしたいと思ってくれてたんだね。
「本当なら、瑠樹の前に現れる事は許されねぇのは分かってる。だけど、こうやって会いに来てくれた事が嬉しくて仕方ねぇ」
正面を見据えたままはにかんだ柊に、胸がときめいた。
だって、私のよく知る昔の柊がそこに居たから。
女ったらしの西のキングじゃない、上賀茂柊。
共に寂しさを埋め合っていた頃の思い出が浮かんでくる。
いつも私の手を引いてくれてた柊。
あの頃よりも随分と大人になって別人のように感じていたけど、柊の中には昔と変わらない彼が居るんだ。
「...わ、私もね、会えて嬉しい。もう二度と会えないと思ってたから」
三年前に諦めたんだよ、柊との再会。
だけど、こんな風に二人で話す時間が取れたんだもん。
嬉しくないわけがない。
柊は恨んでも恨み切れない相手だったんだから。
「ありがとう...瑠樹。そんな風に言ってくれて嬉しい」
柊は照れ臭そうに眉を下げて私をチラリと見てからテーブルのグラスをおもむろに掴み上げた。
そして、そのまま口元へ持っていってゴクリと一口飲んだ。
男らしさの象徴である喉仏が上下されて、ドキッと胸が高鳴った。
...んもう、私ってば何見てんのよ。
無意識に見ていた事が急に恥ずかしくなった。
「ん、どうかしたか?」
私の視線に気付いた柊が私の方へ振り向いた。
「...っ..な、何でもない」
顔の前で手を振って俯いた。
赤くなった頬を気付かれたくなかったから。
「...ふっ..そうか」
そう言うと、柊は口元を緩めると再び正面へと向き直った。
二人の間に流れる沈黙。
この静寂は嫌いじゃない。
昔もこんな風に二人で過ごしたよね。
あの頃はなんの蟠りもなく、二人で同じ時間を共有してた。
私には柊しかいなくて、柊には私しか居なくて。
ずっとずっと一緒だったよね。



