あの日あの時...あの場所で








「...勝手に来ちゃって...ごめんなさい」

ここは女の子が来ちゃダメな場所なのに。


「...いや...問題ねぇ」

柊の優しくなった表情に少しだけホッとした。



「...えっ?良いの?」

「ああ。圭吾、てめぇ、俺を嵌めたな」

私には優しく笑ってくれた柊だったけど、私の背後に居る圭吾には厳しい視線を向ける向けた。


「人聞き悪いなぁ。そんなことしてないし。ま、後は二人で仲良くして」

圭吾はヘラヘラ笑うと、私の背中をポンと押した。


「キャッ...」

前のめりになった体、背後ではガチャリとドアの閉まる音が聞こえた。



ヤられた...圭吾に部屋に押し込まれてしまった。


静寂に包まれる室内。


柊と私しか存在しない部屋は、とても居心地が悪くて。


どうして良いのか分からずにその場に立ち尽くしてしまった。



「...瑠樹、来いよ」

「...うん」

柊の手招きにゆっくりと足を進める。


変な緊張に体も頭も上手く動いてくれなくて。


きちんと話をするんだと決めてきたはずなのに、頭の中が真っ白で、今すぐ逃げ出したい気持ちに駆られた。




柊の座るソファーの前まで行くと、少し距離を空けて横に座った。

対面で話すよりはこっちの方が話しやすい気がしたから。


柊の顔を見てだと、何も言えなくなりそうで怖いんだ。


尋常じゃないほどに動く心臓。


静かなVIPルームの響いてしまうんじゃないか?ってほどで。


チクタクチクタク、時を刻む掛け時計の音だけが耳についた。



どれぐらいそうしていただろうか?


柊と私も何も話さないまま時間が少し経過した。



着心地は悪くなかった。

柊と二人の空間はとても懐かしいモノだったし。


だけど、問い掛けようと思っていた言葉を吐き出すには、とても勇気がいった。



流れる静寂を破ったのは柊の方。


「来てくれてありがとう」

懐かしいその声に涙が漏れそうになった。


「...ううん。勝手に来てごめんね?」

「いや、瑠樹なら何時だって歓迎する」

「ありがとう、そう言ってくれると嬉しい」

柊の言葉にホッとして笑みを漏らした。


勝手に来ちゃった事を少し後悔してたから。