あの日あの時...あの場所で





「圭吾、その子は?」

奥から歩いて来た黒髪のソフトモヒカンの彼は圭吾に声をかけた。

強面で背が高くてガタイのしっかりした熊みたいな人。


「よっ、玲二。この子はキングのお客。可愛いでしょ?」

私の肩にポンと手を置いた。


「初めまして、瑠樹です」

ペコッと頭を下げる。

礼儀正しくしなくちゃね。


「あ、俺は仲道玲二、礼二で良い」

不器用に頭を下げ返してくれた。



「っか、二人とも堅苦しいよ」

と笑う圭吾はテンションが高い。


「そう?」

と首を傾げる私と、


「そうか?」

と同じ様に首を傾げる礼二。

見た目より彼は恐くなさそうだ。



「二人とも同じリアクションしないで笑えるから」

お腹抱えて笑うほど?

圭吾って笑い上戸なのね。


オーバーな笑い方にちょっとだげピクッと眉が上がった私。



「圭吾さ~ん」

今度は手を振りながら小柄な男の子がやって来る。


次から次と...。



「おう、陽史なんだ?」

「キングがVIPルームでお待ちかねですけど」

陽史と呼ばれた彼の報告に、


「うわっ、やべぇ、早くいかねぇと」

と焦りだす圭吾。


いやいや、今焦るの?


「キング、暇すぎでイラついてましたよ」

と陽史に言われ、

「...暇すぎって、そんな遅れてないよ、俺」

と言い返す圭吾だけど、顔が物凄く焦ってるのはなぜ?




「さっきキングを見た時、イラついてたのはお前のせいかよ?」

意地悪く口角を上げた礼二が自棄に楽しそうなのは気のせいじゃないと思う。


「はっ?本気でキングの機嫌悪いのか?」

礼二の言葉に食らい付くように一歩前に出た圭吾。


「ここじゃ女も呼べねぇしうぜえって...言ってましたよ」

と陽史が何気なく言った言葉に、圭吾と礼二が凍り付いた。


...うん、やっぱり...だよね?

ズキンと痛む胸の奥。

私はそれに気付かない振りをする。


流れてる噂の通りじゃん。

何を今さら傷付くのよ。


それに、柊が何をしようと私には関係ないでしょ。


小刻みに数回深呼吸して俯いた。


大丈夫、全然大丈夫。