あの日あの時...あの場所で






ざわめく店内。

店内は、期待を裏切る事なくキャバクラで。


幾つかのボックス席に、西城高校のヤンキー軍団が別れて座ってる。

やっぱり頭はカラフルで、強面なのは否めない。




「「「お疲れ様です」」」

圭吾の姿を確認したメンバーは次々に野太い声で挨拶をしていく。


このノリは夜叉の巣窟とそう変わらない。

だから、私が怖がる事なんて無いんだけど。




「あ、見た目はあんなだけど怖くないからね?瑠樹ちゃんには何もしないから大丈夫だよ」

圭吾は気を使って背後にいる私を振り返ってくれた。


「...あ、うん。怖くないよ」

慣れてるしと言いかけて止めた。


「そう?ならいいけど。こっちだよ」

笑顔で私を誘導してくれるのは良いけど、圭吾の後ろに隠れてた私を発見したメンバーが次々に驚きに目を丸めて見てくるんだけど?


物珍しそうに、怪訝そうに向けられる視線はあまり気持ちの良いものじゃない。


ま、南の狼姫が敵陣に居るんだから、この視線も無理ないとは思うんだけど。


私は小さい体をもっとちいさくして、圭吾の後を追う。




「うわっ、女だ」

「つうか、あれって...」

「...狼姫か?」

コソコソ聞こえる声には嫌悪が混じっててズキンと胸が痛む。

向けられた視線は次第に鋭いモノへと変わっていく。


彼らの反応は当たり前の反応だけど、ここまで敵視されると少し怖いと思う。





「お前達、煩いぞ?彼女はキングのお客だ。文句が有るなら聞くけど?」


ピタッと立ち止まった圭吾が色のない瞳でコソコソ話していたメンバーを睨む。

彼が纏う空気が凍り付きそうなほどに冷たい。


私と話す時には一度も見せたことのない険しい表情に彼もまた不良なんだと再確認した。



「...い、いえ、すいません」

「すみません」

躊躇なく頭を下げたメンバーは顔を青ざめさせて圭吾を見つめる。

ここにもキチンとした上下関係が存在してるんだね。


圭吾は彼らを統括する側に居るんだと知る。


そして、キングと呼ばれる柊はここにいる誰よりも頂点に君臨している。


南の狼王として、豪が君臨するように。



体に走る緊張。


私が狼姫と呼ばれる存在である以上、柊は軽い気持ちで気軽に会える人じゃないんだと心に刻まれた。