あの日あの時...あの場所で








圭吾に揺り起こされて目を覚ましたのは、建物の前に車が到着した後だった。


「瑠樹ちゃん、着いたけど。大丈夫?」

顔を覗き込まれる。


「...ん。ごめん、本当に寝てた」

起き抜けのぼんやりした頭でそう答えながら、半開きの左の目蓋を指で擦った。


「ううん、良いよ。もう少し寝させてあげたいんだけど、そろそろキングとの約束の時間になるんだ」

申し訳なさそうにそう言った圭吾の言葉にハッとした。

そうだ、私は柊に会いに来たんだ。

しっかり覚醒しなきゃ。


両手でパンと頬を叩いた。

「柊が待ってるもんね。行こう」

今度はしっかり目を開けて圭吾を見た。



「うん。キングには瑠樹ちゃんが来ることを伝えてないから、きっと驚くよ」

そう言った圭吾は自棄に楽しそうで。


「へっ?柊は知らないの?」

てっきり話してるもんだと思ってたし。


「そっ、秘密。話して土壇場でキングが怖じ気づいても困るしさ。それに、たまにはキングの焦った顔も見てみたい」

後半半分に圭吾の性格を見たような気がする。

柊の焦った顔を本気で見たがってるよね?どう見ても。


「.....」

この場合なんて返せば正解なのかな?


黒い笑みを浮かべる圭吾に見いる。


「もう、やだなぁ。瑠樹ちゃん、そんな訝しげに俺を見ないでよ」

ワハハとかって笑ってるけど、腹黒いよ圭吾。



ここはスルーしておこう。

少し圭吾のテンポにはついてけないから。





「どうぞ」

「ありがとうございます」


運転手さんが開けてくれたドアから降りた。

裏路地らしいこの場所は昼間なのに、どんよりと薄暗い。


夜にはきらびやかなライトで明るくなるここも、昼間は人通りも疎らで薄汚れて見える。


正面の建物は潰れたキャバクラかクラブってとこかな?

こんな場所に柊が居るの?


怪訝そうに眉を寄せながら派手な作りのドアを見つめた。



「ここは怪しくないからね?俺達が溜まり場に使ってる所だし」

車を降りた圭吾が隣までやってくるとそう説明してくれた。


「.....」

いやいや、どうみても怪しいでしょ。


「ほんとだって。中は過ごしやすいように俺達で改装したし。瑠樹ちゃんが危ない目に遭うことなんてないよ」

力説してくれるので、


「...ん、分かった」

と一先ず頷いた。