あの日あの時...あの場所で









「瑠樹ちゃん!」

私を呼ぶ声に顔を向けると、そこには白い普通自動車。

その後部座席の窓を全開に開けて手を振るのは圭吾。


「あ...お待たせ」

小走りで駆け寄った。


「ううん、時間にピッタリだよ。さぁさぁ、乗って乗って」

後部座席のドアを開けてくれた。



「ん、ありがとう」

開けてもらったドアから車内に乗り込んだ。


「この車なら怪しまれないでしょ?」

と言われ、確かにって思う。


「だね?」

と頷いた。


後部座席だけスモークを貼られた白い普通自動車はファミリーカーに見えなくもない。



「でしょ?これなら狼王にバレないよ」

とピースした圭吾の言葉にチクンと胸が痛んだ。


豪を騙してここに来てる私は、やっぱり罪悪感を抱えてるから。


昨日の帰りに豪と話した事を思い出す。


パパと会うと言った私に『久し振りだし、しっかり甘えてこいよ』と頭を撫でてくれた豪。


騙して西に向かおうとしてる私には、豪の優しさが辛かった。

本当に自分のしてることが正しいことなのか分かんなくなった。


優しい豪を騙してまで柊に会いたいと思う私は罪深い。




「...瑠樹ちゃん、大丈夫?ぼんやりしてるけど」

顔を心配そうに覗き込まれた。


「あ...うん。ごめん、なんでもないの」

慌てて首を左右に振った。


豪の事で悩んでたなんて言えないよ。



「そう?気分が悪いなら眠ってていいよ。向こうに着くまでは40分ぐらい掛かるから」

「あ..うん、そうさせて貰うね」

圭吾ににっこり笑って目を瞑った。


少し苦しいから、今は何も話さずにいたい。


全てを無にして、柊と向き合いたいから。


そして、互いに抱えてきた過去の荷物を下ろしたいから。

それがどんな結果になるとしても。


私達はこのままじゃ何も始まらないんだ。