あの日あの時...あの場所で








「自棄に楽しそうじゃねぇか?」

背後から聞こえた声にドキッとした。

だって、さっきまで寝てたはずのキングの声だから。



「あ、う...うん。これ面白くてさ」

テレビを指差しながら振り返れば、ソファーベッドに寝てたはずのキングが上半身を起こしてこちらを見てたんだ。


うっわ...やぺぇって。

何時から起きてた?


ドキドキと嫌な音を立てる心臓。

ここでバレちゃ意味ないって。


キングにバレないように出来るだけ平静を装って微笑む。


「キングも一緒に見る?」

「いや、良いわ」

俺を漆黒の瞳で捉えたキングは、おもむろに立ち上がる。


「そう?面白いのに」

静まれ俺の心臓。

何にも気づかれちゃダメなんだからな。


内心ドキドキしつつキングの動向を伺う。



「くだらねぇ」

そう言い捨てるとキングは冷蔵庫の方へと歩いていく。


俺はその背中を苦笑いで見送った。



やべぇって...マジで。


キングって、やたらと勘が良いから怖いんだよ。

聞かれてないよね?

瑠樹ちゃんとの電話。


細心の意は払ったつもりだけど、キングが侮れないから怖い。


彼女と約束したんだ。

きちんとそれを果たさなきゃ。


冷蔵庫から飲み物を取ってキングが戻ってきても俺の脈拍は中々元には戻らなかった。






「あ...そう言えばさ、キング」

テレビ画面に視線を向けたままキングに声をかける。


「ああ?」

キングは俺とは対面のソファーに足を組んで座ったままチラリとこちらを見る。


俺はゆっくり振り返った。


「明日って昼から暇だよね?家の仕事とかないよね?」

「ああ。何か用事あったか?」

疑るような視線を向けられて、ドキッとする。

嫌な汗が背中を流れた。



「あ、うん。うちの縄張りの拡大する件についてキングの意見を聞きたくて」

そんなの随分と忘れてたけどね。


「今じゃダメなのか?」

ま、そう言うよね?


「あ...出来たら明日が良い。集めさせてるデータが明日の昼前に届く予定なんだよ」

この間貰ったけどね。

ここは上手く嘘に乗って欲しいんだ。


「分かった。明日の昼からだな?」

と言われ、

「うん。14時ぐらいにここに集合で良いかな?」

と聞く。


「ああ」

頷いたキングはテーブルに置いてあった煙草を手に取ると口に銜えて、ジッポで火を着けた。

カチンと鳴る金属音。


俺は何も言わずにテレビ画面に視線を戻した。

内心、心臓が口から飛び出しそうなほどドキドキしてるけどね。


ああ...マジ、心臓に悪い。





圭吾side.end

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