あの日あの時...あの場所で


 




「鈍感娘だな、瑠樹は」

プハハと笑う咲留。

失礼だな、おい。


でも、今回ばかりは当たってるので言い返せない。



「分かんなかったもん」

唇を尖らせた。


「はいはい、そんな可愛い顔しない。で、悩んでんのか?」

咲留はそう言って伸ばしてきた手で私の頭の撫でた。


「...ん。だって、思いもよらなかったし」

豪が私を...なんて思わないし。


確かに私には親切で優しかったけど。



「瑠樹にとっちゃ、寝耳に水か?」

「うん」

「...ま、でもコクられたら考えねぇ訳にもいかねぇしな?」

「そうなんだよね」

お兄ちゃんみたいだと思ってた豪を男だと初めて認識したのは、告白を受けてからだし。



「まぁ、あんまり深く考えんな」

グシャグシャと私の髪を撫でる咲留。


「でも...そう言うわけにはいかない」

「どうしてだよ?」

不思議そうな顔で私を見た咲留。


「だって、私...柊に会いに行こうって思ってたんだ...」

ゆっくり自分の思ってることを話始める。


「...そうか、やっぱり行くつもりだったのか?」

「ん。このままじゃダメだと思うの。柊も私も立ち止まってちゃいけないはず。進むためには、会って過去を精算しないと」

そう、この先の未来は分からないけど。

立ち止まってちゃダメだ。


進む道がたとえ違うとしても、進まなきゃいけない。




「そうか...。そんな時に豪の告白で困ったんだな?」

「うん。だって...私を思ってくれてるのを知って、柊と会うなんて豪を傷付けてしまうんじゃないかって...」

「あ~まぁな。でも、柊に会うのは仕方ねぇだろ。瑠樹が前に進むために必要な事なんだからよ」

あぁ、やっぱり咲留はお兄ちゃんだね。

いつも、私の事を思ってくれる。


ポロポロと流れ落ちる涙。


柊の事も、豪の事も、全部全部、避けては通れないね。



「...咲留」

涙で滲む瞳で咲留を見た。


「泣くなって。誰かを傷付けずに済むならそれでいいけど。上手くいかない事なんて世の中には一杯あんだよ。だから、一人で抱えて苦しむな」

そう言って優しく頭を撫でてくれる咲留の手は大きくて暖かい。