あの日あの時...あの場所で










しばらくして美味しそうな香りの漂う雑炊の入った小さな土鍋をトレーに乗せて咲留が戻ってきた。


「卵雑炊熱いから気を付けて食えよ」

と私の前のテーブルに置いてくれる。


「ん。ありがとう。凄く美味しそうな匂いするね」

頷いてクンクンと鼻を動かした。


「だろ?俺の力作。クッ○パッド様様だ」

そう言ってスウェットのポケットからスマホを取り出して左右に振って見せた咲留。


ああ、あのお料理に便利なあのサイトね。

私もたまにお世話になってる。


「フフフ..咲留もあのサイト知ってるんだね。頂きます」

と手を合わせてから、トレーに置かれてた蓮華を手に取った。


「おう、知ってる。っうか、教えてもらったんだけどな?大学の同じゼミを取ってる女が教えてくれた」

対面のソファーに腰を下ろすと、照れ臭そうに後頭部に手を当ててニカッと笑った咲留。


「へぇ、ゼミの女の子?あ...美味しい」

咲留から女の子の話を聞くのは珍しいからなぁ。

そんな事を思いながら蓮華で掬った卵雑炊を一口口へと運んだ。


「そっか?良かった。瑠樹に喜んで貰えて嬉しい。あ、ゼミの女ってもそんな親しい女じゃねぇぞ?またまた席がちかくで。早退するのに妹が熱だしたって騒いでたら、消化に良い雑炊の作り方載ってるって教えてくれただけだぞ」

いや、私にそんな言い訳してくれなくても良いけどね。


だいたい、咲留に女友達居る方が良いし。


「...あ、うん。そうなんだ」

興味ないし、って感じの返事をしたら、


「焼きもちぐらい妬いてくれ」

泣きそうな顔をされた。


「いやいや、それは絶対ないから」

咲留はお兄ちゃんだしね。

何が楽しくて焼きもちなんて妬かなきゃなんないのよ。

馬鹿馬鹿しい。



「瑠樹は弱っててもツンだな。兄ちゃんちょっと寂しいぞ」

だから、泣き真似してる意味が分かんないから。


も、なんか、色々と面倒臭いので、咲留を無視して雑炊を食べることに専念した。


あんまり料理の上手じゃない咲留だけど、今回の増水は凄く美味しかった。


クッ○パッドって、ある意味神だな。

料理下手でも簡単で手軽に美味しい料理が作れるんだもんね。


目の前で雑炊を作った経緯や、教えてくれた女の子に関しての言い訳を長々と続ける咲留を視界から完全に排除して、朝ぶりの食事を堪能したのだった。