あの日あの時...あの場所で










「...か...しっかり...瑠樹」

焦った声と揺さぶられる体。


「...ん」

「瑠樹...大丈夫か?」

その声にゆっくりと目を開けた。



「...さ、き留?」

私を心配そうに見下ろす咲留がそこにいた。


どうやら、私はソファーに寝転んでるらしい。



「はぁ...良かったぁ」

安心したように大きく息を吐くとその場にしゃがみこんだ咲留は、だらりとソファーからたれさがったままの私の手を両手で掴んだ。



「どうかした?」

重い頭をもたげながら体を起こす。



「熱があって早退したって、豪から連絡が来て」

「ん」

豪...咲留に連絡してくれたんだ。



「電話してもインターフォン鳴らしても瑠樹と連絡取れねぇし」

「...ごめん」

あ、やっぱりさっきの着信は咲留かぁ。


悪いことしたなぁ。

やっぱ心配かけちゃったね。

私は何時まで経っても咲留に迷惑ばかりかけちゃうんだね。



「お前が無事ならそれでいい。お、まだ熱あんな。こんな所で寝てないで寝室行くぞ」

私の頭を撫でて、それから額に手を当てた咲留は立ち上がると私をお姫様だっこした。



「...ん」

咲留の言葉に素直に従って、咲留の首へと腕を巻き付けた。


「よし、良い子だ」

満足そうに口角を上げた咲留はしっかりとした足取りで歩き出す。


私は咲留に甘えるようにその胸に顔を埋めた。


ホッと安心できる咲留は私にとって大切な存在。

咲留が居てくれたから、今まで乗り越えてこれた。

私が困ってるといつだって駆けつけてくれる優しいお兄ちゃん。



「...咲留、どうしたら良いか分かんないよ」

と力ない声で弱音を吐けば、


「瑠樹、今は何も考えんな。体調を戻さねぇとダメだ」

と優しく諭してくれる。


「でも...」

「でももくそもねぇよ。ほら、ドア開けろ」

寝室のドアを前で立ち止まる。


言われた通りにドアノブへと手を伸ばしてそれを押し開けた。


咲留は体でドアを広げると、迷うことなくベッドへと私を運んでいく。




「熱があるうちは良い考えなんて浮かばねぇよ。ほら、着替えてベッドに入れ。俺は氷枕作ってくっから」

私を優しくベッドに横たえるとそう言って部屋を出ていった。