あの日あの時...あの場所で







パタンと目の前で小さい音をたててしまるドア。


カチャンとオートロックがかかるのをぼんやりと見つめてた。



私は一歩も動けないままその場に釘付けられていて。


だらりと下ろした腕から滑り落ちた鞄はポスンと床に落ちた。





「...い、今、わ、私を好きって...」

震える唇で声を絞り出した。


口元に当てた手はフルフルと震えていて。


豪が....私を?

本当に?


.....だ、だって、豪は...。



咲留みたいに思ってた。

同じ年だったけど、私の中ではお兄ちゃんの位置付けで...。


それなのに.....好きだなんて言われたらどうして良いか分かんないよ。



ズルズルと力なくその場に座り込んだ。




『瑠樹....お前が好きだ』

そう言った豪の瞳は獲物を狙う野獣の様に荒々しかった。

それでいて、私を慈しむ様に見つめていた。



豪のあの視線にドキドキしなかった訳じゃない。

体温は何度上がったし、脈拍だって早くなった。


男の瞳をした豪は怖いぐらいに色気を帯びていたし。


今まで見たことの無かった豪の姿に驚いた。



豪が私を好きでいてくれたなんて、全然知らなかった。


何も知らなくて、私、豪に甘えてきたんだね。



豪が私を好き...豪が...。


フルフルと頭を左右に振った。



突然の告白に混乱する頭。


私はどうすれば良いんだろうか?



ついさっきまで柊の事で頭が一杯だったくせに、今は豪で一杯になってる。

なんて現金なんだろうね。



どうして、このタイミング?




「...私..どうしたら..」

混乱する思いに翻弄される。


柊の事も豪にの事も、どうして良いのか分かんないよ。



やっと、柊に会いに行こうと思えたのに...。


私はまた振り出しに戻る。




バカな私は自分の思いさえ見つけることが出来なくなっていた。