あの日あの時...あの場所で








「ゆっくり休めよ」

マンションの部屋の前、俺は瑠樹と対面に立つ。

ドアを開けたまま、俺を見上げる瑠樹はやっぱり可愛い。


「..あ、うん。色々と心配かけてごめんね」

少し潤んだ瞳で瑠樹が俺を見上げた。


やっぱり具合悪そうだな。

何処と無く、放っておけない気になる。



「お前一人で大丈夫か?」

俺が一緒に居てやりてぇ。


「うん...あ、だけど、大丈夫。咲留に連絡するから」

眉を下げてそんな風に言われると、ここに居座るとも言いずれぇ。


咲留さんが来るなら俺なんてお役ごめんだしな。

あのシスコン咲留さんなら、瑠樹が連絡すりゃ何を差し置いても飛んできそうだし。



「そっか。でも無理すんなよ」

俺は残念に思う気持ちを押し込めて瑠樹の頭を優しく撫でる。


手入れの行き届いた瑠樹の長い金髪はサラサラとしていてとても触り心地が良い。


この髪に指を通して満足いくまで撫で付けてぇな。

髪に顔を埋めて瑠樹を堪能したくなる。


ヤベェ、俺変態か。


沸き起こるヤバい感情を押し殺し、少しだけ口角を上げて瑠樹を見下ろした。




「ん。ありがとう、豪」

瑠樹の笑顔が作り笑いな事に胸が痛む。


今、お前は何を思ってる?誰を思ってる?


保健室で聞いた瑠樹の切ない声が頭の中に甦る。


『...柊』


その途端に毒々しい感情が沸いてくる。


俺じゃない名前が瑠樹の口から出たことに、理不尽な憤りを覚えた。


瑠樹は俺の女じゃねぇ。

だから、誰を思ってても俺は何も言えないはすなのに、俺以外を呼ぶことが許せねぇ。


あぁ、俺ってこんなに小せぇ男だったのかよ。

自分の思いも伝えてないくせにな。


ハハハ...自分勝手な感情ばっか浮かんでくんのな。