あの日あの時...あの場所で









遠慮して一人で帰ると言った瑠樹をマンションへと送った。

あいつは二階堂の車を呼んで帰るつもりでいたみてぇだけど、俺自身が瑠樹をどうしても送り届けたかった。





無言のまま俺の隣を歩く瑠樹はやっぱりどこかしんどうそで。

俺は倒れないように肩を抱き寄せてマンションのエントランスを歩く。


「大丈夫か?」

と声をかけても、

「大丈夫だよ」

と弱々しい声が返ってくるだけ。


どうして、俺をもっと頼ってくれねぇんだ。


瑠樹の体がいつもよりも小さく見えて仕方ねぇ。



最近の瑠樹の顔色が悪くて、目の下に隈を作ってた。

上の空な時も多かった。


それが、保健室でキングの名前を呼んだことに関係してるんだとしたら、俺はどうすりゃ良いんだろうな?


瑠樹へと視線を落とす。

だけど、瑠樹が俺を見上げる事はない。




瑠樹が俺を恋愛対象として見てねぇことなんて分かってる。

だけど、それでもこいつを離したくねぇと思うんだ。


キングに 搔っ攫われんのなんて、真っ平ごめんだ。

瑠樹には俺の側で笑ってて欲しい。

俺の勝手な願望だけど、譲れねぇ。


瑠樹が好きだ。

愛しいと思うんだ。


今まで、こんな風に思った女なんて一人もいやしねぇ。

だからこそ、瑠樹の側に居るのは俺でありたい。


いつから好きだったかなんて分かんねぇ。

気が付いたら瑠樹が大切な存在になってた。


いや、こいつを初めて見た時から俺の心は囚われてたのかもな?


一目惚れ....狼王なんて呼ばれてる俺には相応しくねぇかもしれねぇけど。

たぶん、そうだと思う。


女嫌いの俺が、咲留さんに言われたからって女である瑠樹をすんなりと受け入れられたのは、やっぱそう言う事だろ?


瑠樹は色んな意味で魅力と人を惹き付ける何かを持ってんだよな。


キングも俺もその何かに惹かれる一人の男なんだよ。


だからこそ、易々とあいつの手に渡るのを見逃したりしたくねぇ。


いや、出来ねぇんだよ。



今の俺にとっては瑠樹は大切な女で、側に居なくなるなんて考えらんねぇんだからよ。