あの日あの時...あの場所で








「ジェンキンスさん、今日はもう早退したら?」

カーテンの向こうから声がする。


「だな?そうしろ、瑠樹。送ってってやる」

返事したのは私じゃなくて豪。


「...ん、そうする」

こんな頼りない体じゃ勉強どころじゃなさそうだ。


「鞄を取ってくるから待ってろな」

子供にするみたいに頭を撫でると豪はカーテンを開けた。


「あ、豪。迎え呼ぶから送って貰わなくても良いよ?」

私のせいで豪まで早退とか申し訳ないし。


パパに運転手さんの連絡先聞いてるから、電話すれば迎えは問題ないしね。



「遠慮すんな。問題ねぇ」

そう言うと有無も言わさずにベッドから離れていった。



「森岡君、送ってくれるのね?」

と言った保険医に、

「ああ。帰りの仕度してくるか、その間瑠樹を頼む」

と豪が返事してるのが聞こえた。


ガラガラと保健室の開閉の音がした。

豪が出てったんだと分かる。




パタパタと近付いてくる足音。


ヒョイッとカーテンの向こうから顔を覗かせたの保険医で。


「ほんと、大切にされてるわね。若いって良いなぁ」

と羨ましそうに笑った。


「いつも、迷惑ばかりかけてて...悪いと思っちゃう」

豪は本当に私を大切にしてくれるから、その分迷惑をかけちゃってる。


「フフフ、そんなのは気にしなくて良いと思うわよ。男の子ってそんな細かいこと気にしないし。貴女は守られてれば良いと思うわ」

長い髪をそう言ってかきあげた。



「...でも」

そんなの本当に良いの?


「でもじゃないわよ。女の子は守られてなんぼよ。森岡君に甘えてなさい」

じゃ、私は早退届書くわね、と戻っていった保険医。


豪に甘えてちゃダメなんだよ。


だって...だって、私は.....。



キュッと膝に掛かってるタオルケットを掴んだ。