「...き...瑠樹...」
呼ばれる名前と揺すぶられた体。
重い目蓋をゆっくり開くと そこには心配そうな顔をした豪が私の肩を掴んでいた。
「...んっ..豪?」
掠れた声が出た。
「大丈夫か?魘されてたぞ?」
そう言われて気付く。
あれは夢だったと。
「大丈夫。心配かけてごめんね」
私の呼んだ名前をもしかして豪は聞いてしまったのだろうか。
私は誰の名前を呼んでた?
私は...誰の。
そんなの決まってるよね。
私の幼い記憶に居るのなんて一人しか居ない。
柊.....。
「酷い汗かいてる。水飲むか?」
豪はそう言いながら私の額の汗を手に持ったタオルで拭ってくれる。
「...ん」
そう返事した私に優しく笑って、ペットボトルを差し出してくれた。
「そう言うと思って買ってきた」
豪の優しさに胸がズキンと痛んだ。
「ごめんね、豪」
重怠い上半身をゆっくりとベッドから起こして差し出されたそれを受け取った。
「無理すんなよ」
そう言いながら、枕を背中に挟んでくれる豪は本当に気遣いが出来ると思う。
「...ん」
頷いてペットボトルの蓋を開けて冷たい水を一口飲んだ。
それはとても冷たくて喉に染み渡った。
「美味しい」
と笑ったら、
「良かった」
と頭を撫でてくれた。
ゴクゴクと数回飲んで渇いた体を潤した。
睡眠で取られていたらしい体はようやく落ち着きを取り戻す。
「色々とごめんね」
ペットボトルの蓋を閉めて、豪を見る。
「ごめんより、ありがとうの方が良い。さっきから瑠樹は謝ってばっかりじゃねぇかよ」
眉を下げた豪は私の頭をポンポンとする。
「ん...ありがとう、豪」
優しさに甘えてごめん。
私はこんな風にしてもらう資格なんてないのにね。



