あの日あの時...あの場所で







「瑠樹はこのぐらいじゃねぇと、抱き心地が悪くなるしな」

豪は満足そうにそう言うと私の腰へと片腕を回して支えてくれる。


色々と間違ってると思う。


私は抱っこされるほど子供じゃないしね。

花の高校三年です。



「豪、私は人形じゃないから抱っこばっかり困る」

最近、咲留と豪が被って仕方ない。


だって、二人とも事あるごとに私を抱っこする。

違和感なく抱っこされてる私もどうかと思うけど。


巨人達はなぜか抱っこが好きだ。



豪も咲留もちぃ君も180センチ超えの人は皆、私をヒョイッと抱き上げるんだ。


ほんと、いい加減にしてもらいたい。




「ククク...んなこと分かってる。人形遊びする趣味はねぇしな」

ちょ、ちょっと妖艶に微笑まないでよ。

これだから美形は困る。


豪の様に美しい男はふとした瞬間にフェロモンを垂れ流してくる。




「豪、取り合えず下ろして」

この体制はやだ。


「別に良いだろ」

クイッと口角を上げる豪。


「良くないし。眠いから下ろして」

ソファーにもたれて寝たいもん。


「俺にもたれて寝りゃ良いだろ?」

「なっ...」

いやいや、良くないし。

そんなの丸っきり子供じゃないか!



「それより...最近、変わった事ねぇか?」

射るような視線を向けられてドキッとする。


圭吾に会うの...バレてる?

いやいや、そんな訳ないよね。


「...べ、別にないけど」

焦りを悟られないように自然に見えるように振る舞う。


「だったら良いけどな」

豪はクスッと笑う。


「何かあったの?」

急にこんな事を聞くなんて。


「最近、西が自棄に静かだから気味悪くてな」

豪から出た西って言葉にピクッと眉が片方上がった。


「静かなら平和で良いんじゃないの?」

お互いに無駄な戦いをしてないって事だし。


「...それはそうなんだけどな。ま、何もねぇなら良い」

豪は勘が良いから、私の動きを感知してるの?


ううん、まさかね?

まさか、そんな訳ないよね。


ドキドキする心臓。


豪に気付かれない様にするのが精一杯だった。


だから、豪がそんな私を見て眉を少し寄せた事に気付かなかった。