あの日あの時...あの場所で







「瑠璃ちゃんいえ~い!待ってたでぇ」

夜叉の巣窟についたとたんに、大翔が駆け寄ってきた。



相変わらずテンション高いな


後部座席から降りたばかりの私は何事かと思わず後ろに体をのけ反らせた。



「なっ、何?っいった」

カタンと背中が車体にぶつかった。


「瑠樹、大丈夫か?大翔、飛び出してくんな」

急いで私の側までやって来た豪は私を縱抱きすると、大翔の脛を足先で蹴った。


「いってぇ。なにすんだよ」

ブーブーと抗議する大翔に、

「お前が飛び出したせいで、瑠樹が車体で背中打っただらうがよ」

と殺気を出して威圧する豪。


なっ?と私の背中を擦りながら歩き出した。


「えっ?マジで!瑠樹ちゃんごめんやで?」

焦った顔で豪の速度に合わせて歩きながら私を見てくる大翔。


「フフフ、大丈夫。そんな必死な顔しなくても」

ちょっと打っただけだし。


「良かったぁ。これから気いつけるな」

笑顔になった大翔は私を抱っこする豪と並んで歩く。


「って言うか、私に用だった?」

来るのを待ち構えてるみたいだったし、何かあったんじゃないのかな?


「あっ!そうやそうや。あのな、最近女の子の間で有名なお店のシフォンケーキが手に入ったねん。ほんで、瑠樹ちゃんと食べよと思って待ってたんや」

「えっ?それってキャンディのシフォンケーキ?」

最近、テレビや雑誌に取り上げられて有名になったお店。

海外で修行してきたパティシエが、シフォンケーキ作りだけを専門でやってて美味しいと有名な所なんだ。

大人気で何時間も並ばないといけないし、予約も中々取れないと楓が言ってた。



「そう!そのキャンディ。紅茶とレモンのシフォンとクルミとミルクのシフォンやで」

凄いやろ、と自慢げに胸を張った大翔。


「うん、それは凄いねぇ」

おこぼれ貰えるのは嬉しい。


「な、やろ。やから一緒に行こうや」

そう言って私を受け入れようと広げられた大翔の両手、思わず豪の首に回していた腕を解いて大翔に抱きつきそうになった。


「調子乗んな」

低い声でそう唸った豪は躊躇いもなく大翔のお尻を蹴りあげた。


「いってぇぇ~。冗談やん。マジで蹴らんといてや」

お尻を押さえてその場にしゃがみこんだ大翔は涙目で豪を見上げた。


「知るか」

冷たく言い放つと豪はしゃがみこんだ大翔を避けて夜叉の巣窟の入り口へと向かった。