あの日あの時...あの場所で






「はい、もしもし」

とでた俺に、


『...あ..もしもし、圭吾君の携帯ですか?』

遠慮がちに聞こえた声。



ビンゴ!

聞き覚えのあるその声に思わず頬が緩む。


「うん。圭吾だよ。電話くれてありがとう」

つい興奮した声を出してしまった。


ゲーム中の唯と礼二がバッと振り返った。


慌てて隣のキングに目を向けた。


キングに気付かれちゃ元もこもない。


ピクッとキングの肩が揺れた気もしないでもないけど、目を瞑ったままなので良しとする。

ホッと息をつく。



『...あの、今良いかな?』

おっと、こっちに気を取られてる場合じゃなかった。


「あ、うん。少し待ってくれる?場所移動するよ」

俺はそう言いながら立ち上がる。


なんだ?

どうした?

と言いたげにこちらを見てる唯と礼二に軽く手を振ってスマホを耳に当てたまま歩き出した。


ここじゃ話なんて出来ないしね。


慎重に事を進めなくちゃ。



幹部室を出て、2つ隣の空き部屋に入った。


物置になってるそこは少し埃っぽい。


だけど、ここなら誰にも話を聞かれないだろう。


やっと掛かってきた電話を無駄になんてしたくないんだ。


キングが再び未来に向かって歩き出す為に、俺はなんでもやってやる。



「もしもし、瑠樹ちゃん。待たせてごめんね?」

待たせてた彼女に声をかけた。


『ううん。忙しいのにごめんね?』

「いやいや、全然暇だったし気にしないで。瑠樹ちゃんは俺の待ち人だったし」

冗談めかしてそう言った。


『あ、うん、分かった』

電話の向こうで瑠樹ちゃんがクスッと笑った声が聞こえた。


「電話くれたって事は...手紙を見てくれたんだよね」

『...あ、うん。そう』

「そっか...どうするか、決めた?」

電話してきた時点で彼女の決断は決まってると思いはしたけど、どうしても聞いてみたくなった。



『...うん。決めたよ』

自信なさげな声に、

「ありがとう」

って返した。


キングにチャンスをくれた事が嬉しい。


きっと、俺の知るキングの過去と気持ちを知れば、瑠樹ちゃんは苦しむ。


だけど、それ以上にキングへの思いも強くなるはずだ。


いや...強くなってほしい。

俺の勝手な思いだけど。