この事はパパしかしらない。
パパはゆっくりと考えればいいし、重荷に思うこともないと言ってくれたけれど。
おばあ様が守ってきたそれを蔑ろにすることも出来なくて。
「瑠樹、未来なんてなるようにしかなんねぇよ」
咲留、軽いよ、軽すぎる。
「そんなもの?」
「そんなものだ。だから、今を必死に生きてみろ」
そう言うと咲留は珈琲カップの中身を飲み干した。
「おかわりいれようか?」
と立ち上がって手を差し出した。
「おう、頼む」
ニカッと笑ってカップを差し出した咲留。
自分の分のカップも一緒に持ってキッチンへと向かう。
今を必死に生きる...か。
サイフォンをセットしながら、ぼんやりと考える。
気持ちを押さえて生きていた私にそれが出来るかな。
小さい頃に我慢することを覚えてしまった私は自分を解放してあげることが、とても苦手だ。
「瑠樹、お前は自分の生きたいように生きて良いんだぞ。誰にも文句なんて言わせねぇ。柊の事も将来の事も、思うようにやってみろ。俺はどこまで味方だからな」
その声に視線を向ければ、こちらを見た咲留とキッチンカウンター越しに目があった。
「...ほんと、シスコン」
と笑った私に、
「上等!」
と笑って親指を突き出した咲留。
「瑠樹を苦しませた柊の事は許した訳じゃねぇけど。咲留が昔みたいに笑えるようになるなら、向き合う事に賛成だしな」
咲留は本当に欲しい言葉をくれる。
「うん、向き合ってみる」
しっかりと頷いた。
過去に囚われたままの今を変えるために、私は向き合う。
この決断が何を引き起こすかを知らなかった。
私や咲留が考えていたより事態は複雑に混ざり合っていく。
皆を巻き込んで急転していくのだ。



