あの日あの時...あの場所で






「ツンデレ瑠樹が可愛すぎる」

鳩尾を押さえながら、違う意味で身悶えするのは止めて欲しい。


だけど、咲留がおどけてくれたおかげで気持ちも軽くなったから。


「咲留、いつもごめんね」

私の為に気を使わせて。

咲留は何よりも私を優先してくれる。


「ごめんじゃなくて、ありがとうの方がいい。瑠樹は謝らなきゃ行けねぇことをなにもしてねぇだろ?」

立ち上がった咲留は真面目な顔をして私を見下ろす。


「...ん、ありがとう」

「それで良い。さ、とっとと食っちまおうぜ」

良し良しと私の頭を撫でた後、咲留は元の席へと戻っていった。



「うん、そうする」

私は頷いてハッシュポテトにかじりついた。


「それはそうと、瑠樹は進路決めたか?この間進路指導あったろ?」

咲留はハンバーグをモグモグしながら聞いてくる。

あらら痛い所を聞いてくるのね。

実の所、将来のビジョンなんて全くない。

高校三年生のこの時期にこれじゃダメだよなぁ。


担任の先生も困ってたし。



「あ...えっと、まだ...」

そう言って目を伏せる。

なりたいモノも目指すモノも無いんだよね。


「そうか。ま、慌てなくても良くね?取り合えず学力にあった大学に進学すれば?」

軽い感じに言ってくれた咲留に、


「それで良いのかな?」

と首を傾けた。


「良いだろ。俺も高校の時は何も考えらんなくて大学に入ってこの3年で目指すものを見つけたし。後の一年もまだ悩むつもりだ」

ああ、そう言う所は兄弟なんだと思った。

因みに咲留は帝王学と経営学を学んでパパの後を継ぐ覚悟をしたらしい。

だけど、大学を卒業して直ぐにはパパの会社じゃなく他所の会社で三年ほど修行するつもりらしい。



「...そっかぁ。私もそんなので良いのかな?」

おばあ様の残した事業は人手に託したけれども、そこの経営陣の意向で私は役員として名前を残して貰えてる。

だから、定期的に給与の支払いなんかもあったりするんたけれども、


なにもしていないのに、お金を貰う事には凄く抵抗があって。


こちらに来る時に、役員から外して欲しいとお願いしたけれど、彼らは首を縦に振ってくれなかった。

私さえよければ大学を卒業して経営に参加して欲しいと、そんなことまで言ってくれた。

私はそんな彼らに何かを返したいと思うけれど、それを将来のビジョンにするのは何か違う気がするんだよね。