あの日あの時...あの場所で







咲留は話終えた私をギュッと抱き締めてくれた。

その胸は大きくて温かい。

いつも、私を守ってきてくれた腕の中で声をあげて泣いた。


「...うぅ...っ...あぁ」

私を抱き締めたまま、後頭部を撫でてくれる咲留はやっぱりお兄ちゃんで、私も素直になれた。


「一人で辛かったな。瑠樹はずっと一人で抱えて来たんだよな」

「...ど、どうして良いか分かんないよぉ...グスッ」

「ああ。悩むよな?でも、豪達の事は考えなくていいぞ」

その言葉に顔を上げた。


「えっ?」

どうして?と良いかけた私に、


「お前は豪の女でも何でもないから行動制限なんてない。俺があの学校に編入させて、あいつに瑠樹の護衛を頼んだだけだ。だから豪や柊達の権力闘争に瑠樹は関係ねぇしな。お前が誰に会おうと文句を言われる事はねぇし、それが裏切りにもなんねぇ」

だから、もう泣くなと、安心させるようにポンポンと頭を叩いた咲留。


「...でも、豪達は私を大切にしてくれてるから」

あんなに皆に大切にされてて、敵である相手に会うなんて...。


「瑠樹は中立なんだ。男のくだらねぇプライドに左右される必要はねぇよ。だから、圭吾って奴に会いに行け。それに瑠樹に文句言う奴がいたら俺がシメてやる」

瞳をギラリと光らせた咲留は本気だと思う。


「...ありがとう、咲留」

気持ちが軽くなったよ。


「何も知らないまま立ち止まってるぐらいなら、圭吾って奴に会って真実を聞いてこい。そうして、自分の気持ちと向き合えば良い」

頭を撫でてくれる咲留に、私は決意を決めた。


圭吾に会いに行こう。

会って、柊の過去を...私達の別れの原因を知ろう。


そして、胸の奥に蟠る気持ちを整理しよう。




「...うん、会ってくる」

涙を拭いてニッコリ笑う。


ありがとう、咲留、背中を押してくれて。


「ああ、行ってこい。会いに行く日が決まったら俺が上手く段取りをつけてやる。だから大船に乗った気でいろ」


「...咲留はいつも優しいよね」

と言った私に、


「瑠樹以外に大切なもんはねぇからな?もっと甘えて良いぞ。俺の可愛い瑠樹」

ってギュッと抱き着いてきた。


...ので。


「調子に乗りすぎ」

と肘鉄を鳩尾に食らわせて咲留の腕の中から逃れた。


「...うっ」

鳩尾を両手で押さえてフローリングに踞る咲留。