あの日あの時...あの場所で






「あいつが...柊がお前を抱き締めてるのを見た時から、止まってたお前達の時間が進み出したのは分かってた。だからあいつを瑠樹から遠ざけたかった。瑠樹を泣かせたくなかったからな」

咲留は膝に乗せた私の両手を自分の両手で包み込むと優しく微笑んだ。


「...っ..」

「進んだ時間が瑠樹を幸せにするのか不幸にするのか分からねぇからな?それなら遠ざけようと思ったんだ。だけど、お前が望む事を否定してまでそうしたいとは思ってない。俺は常に瑠樹の味方で居たいからな」

最後に冗談めかした咲留の瞳は真剣だった。


「ありがとう、咲留」

いつも私を一番に考えてくれて。

こんな不甲斐ない妹なのに...。


「お礼を言われる様な事じゃねぇよ。俺は屋敷の奴等のお前への苛めに気付けずに一番に助けてやれなかった。だからあの時に決めたんだ、どんなことがあっても瑠樹の味方で居るって、一番に瑠樹を理解してやれる存在で居るって」

「...咲留」

咲留はまだあの時の事を引きずってたんだね。

柊が屋敷に乗り込んでメイド達の私に対する苛めが発覚した時から、咲留は気づけなかった自分を責め続けてたんだと知る。


「だから、今度はお前のSOSを見逃さねぇし見逃した振りもしねぇ。何を聞いても驚いたりしねぇから話してくれよ」

助けたいんだ、と言われたらもう言わずには居られなかった。


「...咲留、私ね...どうして良いか分からない...」

ポロポロと涙を溢しながら咲留を見つめる。


「泣かなくて良い。俺も一緒に考えるからだから泣くな」

指で涙を拭いながら頭を撫でてくれる咲留に、私はゆっくりと話し出す。


小西さんが圭吾からの手紙を学校まで届けたくれた事を。

そして、その手紙の内容を。

豪達への思いと、知りたいと言う思いに揺れてる事も伝えた。


咲留は口を挟む事もなく、穏やかな表情で話終わるまで聞いてくれた。


口にすることで、気持ちが落ち着いていく。


悩んでいたけど、心は決まってる事も分かった。


だけど、私は動けない。


大切にしてくれてる豪達への罪悪感があるから。