あの日あの時...あの場所で






「って言うか、俺の事は良いから。瑠樹が今抱えてる問題を教えろ」

あらら、忘れてなかったのね。

しかも問題を抱えてるとかバレてるし。

咲留はこんなでも侮れないと再確認した。


「本当、何もないよ」

ごめん、言えないよ。

咲留だって、柊の事を敵視してるのに。


あの日、私を柊から守るように立ちはだかった咲留を思い出す。



「...柊か?」

咲留の出した名前にドキッとした。

それを悟られないように笑顔を作る。


「ど、どうして柊?私達は関わりないし」

そう関わりない。

お願い作り笑いに気付かないで。


「...瑠樹。俺は優しくねぇからこのまま引き下がらねぇぞ。だって、そうしたらお前は一人で悩んで苦しむだろ」

ああ、咲留は本当に優しいお兄ちゃんだよ。

こんなにも私を分かってくれてる。


だけど...言えないよ、柊との別れの原因を知りたいだなんて。



「...咲留」

このまま話せば楽になれるのかな?

この胸のモヤモヤは消える?


「瑠樹、俺はお前を泣かせた柊が気に食わねぇ。だけど、お前が柊を思ってる事まで否定しねぇ。だからお前が何をしようと俺だけはお前の味方でいる」

真剣な顔でそんなこと言わないで。


どうしてバレてるの?柊を思ってるって。

当事者の私でも隠して誤魔化して分からなくなってたって言うのに。


「...わ、私は...」

違うと否定できないのはなぜだろう。

ここで否定しなきゃいけないのに。

真っ直ぐに咲留の顔を見れなくておもわず俯いた。


静まるリビング、流れる沈黙。

俯いて黙り混んだ私を咲留はどう思ってるんだろうか?

何も言えなくなった自分が情けない。


カタンと椅子の音が鳴る。

咲留が立ち上がったんだと思う。


「俺はお前の望む道を歩かせてやりてぇ」

ポンと頭に乗った大きくて温かい手。

何度も私を着替えさせると励ましてくれた咲留の手だ。


「...咲留」

顔を上げた私の目に写ったのは、目の前の床に膝をついて私と目線を合わせた優しい瞳をした咲留。


隠せないと思った。

きっと咲留には言わずにいられない。

ううん、私自身が一人で抱えきれないから咲留を頼りたいと思ってるんだ。