あの日あの時...あの場所で




「でも、噂通り寵愛してるのねぇ。去年までの貴方とは大違いね。今の姿、卒業したファンクラブのメンバーが見たら驚くだろうね」

顎に手を当てて私を抱き締める豪を見て、ほほぉ~と感心する小西さん。


...豪にファンクラブなんてあるんだ?

いくら冷たくても見た目は極上だもんね。


チラッと豪を見上げる。



「...うるせぇ」

豪は私を背中から抱き締めたままで小西さんを睨み付けた。

「そんな格好で威嚇されても怖くないわよ。誰からも恐れられる狼王が腕の中にこ~んな可愛い子抱き締めてるんだのもねぇ。本当、世の中って分からないわねぇ」

腕組してクスクス笑う小西さんは、豪の威嚇ももろともせずに凛としてる。

やっぱり生徒会長をやってた事だけあって度胸はある人だと思う。


「うちの豪をかわかうのはほどぼとにしてくださいね、小西会長。それにうちの姫に迂闊に近付くのはよしてくださいね?」

笑っていない瞳を小西さんに向ける夏樹。


「フフフ、残念だけど瑠樹ちゃんとはもうお友達になったもの。貴方達に気を使うつもりなんてないわよ。ねぇ、瑠樹ちゃん」

夏樹に冷たい視線を向けてから小西さんは私へと視線を向けた。


「...チッ」

豪の不機嫌な舌打ち。

夏樹が訝しげに目を細める。


「瑠樹、行くぞ」

「えっ?」

強引に私を抱き締めたまま教室から出ようとする豪に戸惑う。


「あっ!ちょっと、勝手に連れていかないでよ」

プンプン怒るのは小西さん。


「申し訳ありませんが、そろそろチャイムが鳴りますので我々は失礼します」

小西さんと私達の前に立ちはだかった夏樹は笑顔を顔に張り付けた。

「...まったく、瑠樹ちゃんには面倒なナイトが多いわねぇ。良いわ、また遊びに来るし」

フンと鼻を鳴らした小西さん。


「小西先輩、ありがとうございました」

豪の腕から抜け出して、彼女を見据えて頭を下げた。

私宛の手紙を届けるために来てくれたんだと思うから、きちんとお礼が言いたかった。


「ううん、こちらこそありがとう。また会おうね」

笑顔で手を振ってくれる小西さんに、私も手を振り返した。


「もういいか?」

私の顔を覗き込んだ豪に、


「うん」

と頷く。


フッと口元を緩めた豪は私の手を引いて歩き出す。


教室から出た途端に注目の的になる。


一斉に向く視線にイラッとくる。


ほんと、皆、暇人ね。