あの日あの時...あの場所で






「お前は好かれてると思うぜ?」

と言った咲留さんに、

「兄弟愛に限り無く近い好きですよ」

と眉を下げた。


瑠樹の好きと俺の好きは意味が違う。

それじゃ意味ねぇ。


瑠樹の中での俺の立ち位置は咲留さんや兄貴と変わんねぇ。



「...あ、まぁ、そこは否めねぇ。男として意識させる所からだな」

ポリポリと頭をかいた咲留さんは苦笑いした。


「...キングに比べたら歩が悪い」

吐き出したその言葉に自分でも驚いた。


西のキングに対してそんな弱気な言葉が出るなんてな。

情けねぇ。


恋は人を変えるっつ~けど、本当だな。



「んな弱気、お前らしくねぇな?」

咲留さんは驚きながらも、その瞳は強く俺を射抜く。


「瑠樹に関しては戸惑う事ばかりで...こんなの初めてなんすよ。瑠樹は困らせたくねぇし泣かせたくもねぇから」

情けねぇけど、恋愛なんてまともにしてきてねぇからな。


もちろん、女をまったく知らねぇ訳じゃねぇけど。

瑠樹はどう扱って良いか分からねぇ。


大切にしたくて、つい臆病になっちまう。



「兄貴としては瑠樹を慎重に扱ってくれんのは嬉しいけどな?柊が出張ってきたなら、そう悠長な事も言ってらんねぇぞ?」

咲留さんの何かを恐れてる表情に、俺は静かに頷く。


「分かってます。俺も易々と奪われるつもりありませんよ」

瑠樹を悲しませた癖に女遊びに興じていたキングになんて、掻っ攫われて堪るかよ。



「頼むぞ、豪。瑠樹を守ってやってくれ」

俺の肩をガシッと掴んだ咲留さんの手は少し震えてた。


「はい、守ります」

決意を込めた瞳で咲留さんを見返した。


この時は本当にキングになんて負けないと思ってた。


瑠樹をあんな奴に渡さないって決めてた。


だけど、俺は過去とあいつの決断を知った時、心を揺らしてしまうんだ。




それぞれの思いは細い糸になり絡み付く。


それはほどけなくなるほどに.....。


そして、思いもよらない方向に転がり始めるんだ。






豪side.end

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