「そうですね。今日は明け方まで続きそうですからね」
夏樹も兄貴達のテーブルを見てゆるりと口角を上げた。
「やっぱ、最後の日やし。あの人らも名残惜しいんやろな」
大翔とは頬杖をついて、楽しそうに騒いでる兄貴達を見た。
「俺達はあの人達に恥じないように、これからここを守らねぇとな」
改めて覚悟を決める。
彼から譲り受けるこの場所は、中途半端な思いじゃ引き継げねぇ。
「そうですね。今以上に気を引き締めます」
クイッと眼鏡のブリッジを押し上げた夏樹の瞳には、強い意思が宿ってる。
「...なんや実感はまだ沸かへんけど。俺も頑張るわ、色々と」
含みを持たせた口調の大翔に少しだけ嫌な予感がした。
こいつは良く空回りするからな。
「あ、大翔。先に言っておきますが、ここには女の子を連れ込み禁止ですよ。ここに入れるのは瑠樹さんだけでいい」
夏樹の鋭い視線にタジタジしながらも頷く大翔。
「わ、分かってるって。面倒ごとは持ち込まへんようにするし」
「分かってくれれば良いです。ここに瑠樹さんの害になるものは一つたりとも要りませんからね」
夏樹もきちんと瑠樹の事を考えてくれてる。
大翔がなにも考えずに女を連れ込むようになれば、必ず火の粉は瑠樹にかかっていくからな。
女は女へと悪意を向けたがるから面倒臭せぇ。
下の連中にも、そこは徹底させとかねぇとな。
「夏樹、大翔だけじゃなくここに出入りする連中全てに通達しとけ。ここは瑠樹以外の女は出入り禁止だ」
俺はそう言うとすっかりと寝入ってる瑠樹をお姫様抱きして立ち上がる。
「了解しました。本日中に通達をしておきましょう」
夏樹の返事を背中越しに聞いて俺は二階への階段を目指して歩き出した。
騒がしいフロアの抜けて階段を上がる俺の腕の中には、静かな寝息を立てる瑠樹。
壊れ物を運ぶようにゆっくりと歩く。
起こさないように、落とさないように。
俺が守るから、だからずっと側に居て欲しい。
欲が出てくる。
もう瑠樹は俺の中では、ただの保護対象じゃない。
守りたい唯一の女。
西にも、他の連中にもやらねぇ。
瑠樹がその瞳に写すのは俺だけで良いんだ。



