あの日あの時...あの場所で








盛大な引き継ぎ式は、滞りなく行われた。


今まで源次が座っていた場所に座るのは、もちろん豪で。

何故か私はその横に座らされてて。

俗に言うお誕生日席には、皆の視線が集まってた。

恥ずかしいのに、始終そこに居ることを余儀なくされた私。


咲留達大人組の面々は、飲めや歌えの大騒ぎ中。

豪達の隣に設営されたテーブルで、ガバガバお酒を酌み交わしてる。


もちろん、豪達もいつもなら飲むのだけれど、今日の引渡し式が大々的に知れ渡っていて警察の査察が入るかも知れないと言う情報を掴んだので、大人しく禁酒禁煙に勤めてる。

乗り込まれた時にお酒を飲んでたら摘発されちゃうからね。

豪の一声に皆が大人しく従ってる。


さすが、狼王だね。





「瑠樹ぃ~兄ちゃん所においでぇ」

少し頬を赤くした咲留が手招きする。


「嫌よ、そっち酒臭いもん」

ふいっと顔を逸らしてテーブルに置かれたグラスを持った。

少し濃いめのカルピスのソーダ割り。

もちろん、ノンアルコール。



豪は私の腰を抱いて、皆が騒いでるその場所をグルリと見渡している。


どんな気持ちなのかな?

少しだけ聞いたみたくなった。


「ね?豪」

「ん?」

視線を私へと落とす。


「今、どんな気持ち?」

この場所の頂点に立った事は豪とってとても意味のある事なんだろうか。


「...そうだな?あんま実感ねぇな。ここはさっきまで兄貴達のモノであの人達が守ってきた。それを受け継いだからって直ぐには分かんねぇ」

豪はそう言うと倉庫の中を見渡した。


皆が笑顔で騒ぐそこはとても暖かい場所で、そしてとても大切な場所だと思えた。



「源次や咲留の代よりも、ここはきっと大きくなるね?」

豪にはそれだけの実力が有る気がした。


豪自信は野心なんてないだろうけれど、周りがきっと捨て置かない。



「そうか?」

「うん、そうだよ。だって、豪は凄いもん」

自然と仲間の事を考えることが出来て、皆が着いていきたいと思う人だと思うから。


「ふっ...んなの、お前の買いかぶりだろ?」

豪は少し照れ臭そうに笑うと私の頭をクシャクシャと撫でた。


「そうじゃないもん。私意外と見る目あるんだからね」

失敬な。


「そうか。だったらそうかもな?」

私に向けてくれる瞳はとても優しい。


豪達の場所になった新生夜叉の巣窟。


きっと、ここから色んな物語が生まれるんだ。


ばか騒ぎする皆の顔は希望に溢れてる。


私は豪の隣で皆の笑顔を見つめながらグラスの中身を飲み干した。