あの日あの時...あの場所で







二階に上がって少し廊下を歩くと何時もの部屋の前で止まった。


今日の式典が終われば、ここも豪達の物になるんだね。

ちょっとだけ寂しいと思った。



「ん?どうかしたか?」

ドアノブを持った豪が私を不思議そうに見下ろす。


「...あ、うん。なんか、明日からは咲留達が居ないんだなって思うと、ちょっとだけ寂しいなって」

ふっと笑みを漏らした。


日本に来て初めてここに来た日を思い出す。

ヤンキー君達に囲まれてビビって、変な女の子に逆恨みされて睨まれて...。


源次達に初めて出会った日、私の知らない咲留を見つけた。

その後も何度か遊びに来たけど、いざ彼らが居なくなると思うとやっぱりどこか寂しさを感じでしまう。



「フッ...寂しがんな。ここはあの人達が居た頃より賑やかになる。それに、来るなって遊びに来そうだしなあの人達は」

そう言うとニタリと口角を上げた豪。


「うん」

そうだね、きっとそうだ。

源次達は、来そうな気がする。


「だから、寂しそうな顔せずに笑ってろ」

あの人達には陰気臭いのは似合わねぇしと付け足した豪に納得する。


そうだね、笑って送り出さないとダメだよね。


あんまり寂しそうにしちゃうと、調子に乗ってくっついて来そうだしね。


頷いた私を見て満足そうに目を細めた豪はドアを引き開ける。


その途端に漏れ出た光に目をしばたかせた。



「瑠樹ー!」

源次の声。


「瑠樹ちゃん」

健の声。


「瑠樹」

咲留の声。


「豪、遅いぞ」

ちぃ君の声。


いつもと変わらない配置に座る皆がこちらを見て、手を振ってた。

室内をグルリと見渡して、何時もの違うのはこの場に夏樹と大翔が居るってこと。

もちろん、豪だって違和感の一つで。


だけど、これからは彼らがここの住人になるんだ。


それが普通になる日はすぐそこに迫ってる。

今日の引き渡し式が終われば、この場所も世代交代するんだ。


やっぱり寂しいと思ってしまうよ。