あの日あの時...あの場所で








豪のお迎えでやって来た夜叉の巣窟は、沢山の人で溢れ返っていた。


しかも大半がヤンキーと呼ばれる部類の人達で、怖いのなんのって。


ワタシになにもしてこないのが分かってても、ビビっちゃうよ。


倉庫前に横付けされた車から降りるのを戸惑ったし。


豪が手を引いてくれたから降りることが出来たんだけど。



「「「お疲れさまです」」」

豪を見た人達が野太い声で挨拶をすると次々と頭を下げ始める。


ヤンキー君達も礼儀正しいのです。


豪は少し面倒臭そうに眉を寄せると軽く手を上げて挨拶を返す。



「人が多いね?」

こちらを見る視線の多さにタジタジしながらも手を繋いでる豪を見上げた。


「ああ。なんか知らねぇがやたらと集まってやがる」

呼んでねぇのに、と周囲を一瞥した豪。

それだけ、豪を慕う人達が多いんじゃないかな?


「皆に好かれてるんだね?豪は」

フフフと微笑む。


普段は素っ気ない豪だけど、仲間の事をよく見てるしよく考えてると思う。


だからこそ、皆がこうやって自然に集まってきてくれるんだよ。



「男に好かれても嬉かなねぇよ」

なんて照れ臭そうに言うから、

「あれ?女の子に好かれたかった?豪って女嫌いなのにね」

と意地悪く目尻を下げた。



「...チッ、うっせえよ。ほら行くぞ」

仕打ちした豪はバツが悪そうに目を伏せると、掴んだ手を引いて倉庫のドアを押し開けた。


ざわざわと騒がしい倉庫内。


外に人が溢れてたから、中にも相当人が居ると思ってたけど、さらに予測を越えるほど居た。


いやいや、鮨詰め状態とか暑いでしょうが!


大勢の人の熱気でムンムンする倉庫内はかなり息苦しい。



しかも男臭いんだけど。

失礼だけども、思わず手を繋いでない方の手を口元に当てた。


「...っ..」

頼むから倉庫のシャッター全開で開けようよ。


「どうした?瑠樹」

心配そうに見下ろした豪に、

「人が多すぎて息苦しい」

と正直に話す。


「...あぁ、確かにそうだな?」

豪はクツッと笑うとウヨウヨ居るメンバーへと目を向けた。


「おい、シャッター開けろ。男ばっかりこんなに鮨詰めになってたら暑苦しくて仕方ねぇ」

周囲に響いた低い声。


「「「はい」」」

豪の声に一早く反応した人達がシャッターを開こうと行動し始める。