「何もされてねぇか?ごめんな?」
ペタペタと私の体を触りながら謝る咲留。
「ちょ、ちょっと、何してるのよ?何もされてないし」
キッと睨み付ける。
ベタベタ触んないで!子供じゃないんだし。
「だったら良いけど。あいつ、今更何なんだよ?」
柊が歩いていった方向を睨み付ける咲留。
「.....」
確かに今更なの。
どうして、あんなことを言うの?
柊はなんて忘れて前に進んでたんじゃ無かったの?
私も同じ方向を複雑な思いで見つめた。
柊の手を離したのは私。
そんな私から離れていったのは柊。
私達はもう交わらないんじゃなかったの?
「瑠樹、あいつには...柊には気を付けろよ?」
咲留、そんな心配そうな顔しないでよ。
「...うん」
「もう、お前が傷付くのは見たくない」
咲留は私を見下ろしながら拳を握る。
柊と連絡が取れなくなって不安で落ち込んだ時、咲留はわざわざアメリカまでやって来てくれた。
私を励ますために。
咲留が居てくれた事で、心の整理もついた。
離れた距離が、柊との心の距離も引き離しのだと何度も泣いた。
理由があるにせよ、先に手を離したのは私。
柊がそんな私に愛想を尽かして離れても仕方ないんだと自分に言い聞かせた。
何度も柊を思って泣いた。
食事だって食べられないほど落ち込んだ。
そして、ようやく立ち直れたのを、咲留は知ってるもんね?
「咲留、大丈夫。私はあの頃よりも大人になった」
だから、この胸の中のモヤモヤには気付かない振りが出来る。
「...瑠樹、一人で悩むなよ?俺が居るからな?」
グリグリと頭を撫でてくれる咲留の手は温かい。
さっき、私に触れた柊の手も温かかった。
柊に触れられていた場所が熱を帯びる。
大丈夫...私は大丈夫。
惑わされたりしない。
「...うん。ありがと、咲留」
作った笑顔はひきつってなかっただろうか?
だけど、今の私にはこれが精一杯だったの。



