あの日あの時...あの場所で





圭吾に誘導される様に階段の踊り場に移動する。


柊はわたしの後ろからやって来るけど、何を考えてるのか良く分からない。

だって、気難しそうな顔をしたまま一言も話さないんだもん。



「じゃ、俺は時間稼ぎにお兄さんの相手をしてくるから、二人で話してね?」

有無を言わせない口調でそう言った圭吾は、ササッと私達を残して来た道を戻って行った...駆け足で。



「へっ?」

ど、どうすんのよ?

いきなり柊と二人とか無理でしょ。
 

振り返った私の目には同じ様に困った様に眉を下げた柊だけで、圭吾の姿はもう無かった。


は、早すぎでしょ!


救いは柊も戸惑った表情をしてること。


微妙な空気が流れる。


時間がないのに、何を話して良いのかさえ分からない。


そもそも、どうしてこんなことになったんだろうか?


二度目の再会は同じ複合スーパーだなんて、誰も予想しない。

こんなに広くて、こんなに人が多いのに、出会ってしまうなんてね。




「.....」

「.....」

目が合ったけど、互いに何も口には出来なくて。



こんなに近くに居るのに、柊がとても遠かった。


三年前よりも随分と大人びた柊にドキドキと胸は高鳴る。


しまいこんだはずの気持ちが甦ってくる。


ああ、そんなの駄目なのに。


どうしても、柊に手を伸ばしたいと欲が出る。




両手を正面で合わせると固く組んだ。


豪達を裏切ってしまわないように。


ここで、柊に触れたらきっと私のタガが外れてしまう気がしたから。

そうしたら、何も考えずに柊の腕の中に飛び込んでしまう。


私は南の狼王に守られてるのに、そんな事しちゃ駄目だもん。



柊の射抜く様な瞳に思わず俯いた。


湧いてくる思いを...押さえつけなきゃ。