あの日あの時...あの場所で








明るい車内、窓の外へと視線を向ければ、そこは黒い壁が続いている。


おぉ!地下鉄!

ちょっと感動した。


良く見てると時おりピカピカとLEDのライトが光ってて、造形を作り出していた。


電車の動きを利用した上手いアートだと思う。


混雑する車内はムシムシしてるけど、咲留が腕で私のために空間を作ってくれてるので、そんなに気にならなかった。


一駅はあっという間だった。


「瑠樹、こっちのドアが開くからもたれんのやめろ」

咲留の腕が背中に回って私を支えてくれる。


程なくして甲高いブレーキ音がして、電車はゆっくりと停車し始めた。


明るい駅に向かって進んでいく。



完全に電車が停車する少し前に、ガタンと大きな揺れに遇う。


咲留がしっかりと支えてくれてたので、よろける心配はなかった。


やっぱり咲留は、私のお兄ちゃんだよね。



ドアが開くと一斉に皆が降りていく。


雪崩だなぁ。

皆急ぎすぎじゃない?


ぼんやりとそんな事を思ってたら、その流れに押されて咲留とはぐれそうになった。



「瑠樹、危ねぇから」

あわやと言う所で伸びてきた咲留の手に確保してもらった。


「ごめんね」

と笑ったら、

「地下鉄はこれで最後な」

と言われた。



「えぇ~また乗りたいし」

抗議の声を上げたら、


「お前と地下鉄は気が気じゃねぇから無理だ」

と溜め息をつかれた。


なんでも、居なくならないか?とか、置換に狙われないか?とか、色々考えながらはしんどいらしい。



咲留に手を引かれて少しすいた地下道を歩く。


乗った時とは逆に登りの長いエスカレーターに乗った。



地上階に着くと改札が幾つか並んでいて、それを抜けるとそこは外だった。


複合スーパーは見える位置にあり、地下鉄からでてそちらへ向かう人も多かった。


「手を離すなよ」

念を押される。


「大丈夫だってば。はぐれてもスマホあるし」

ある程度の範囲内ならなんとかなるしね。

私だって成長してるのよ、フフフと笑った。



「瑠樹がそんな顔してる時が一番不安だ」

と言われる始末。

いつまで、私を子供扱いするつもりだか。


咲留の顔が本気で心配そうにしてるので、敢えて何かを言うのは止めたけど。



だけど、咲留のこの心配は本当になる。


私は迷子になってしまうんだ。

そして、再び出会ってしまう。