あの日あの時...あの場所で








まず切符の買い方すら知らなかった私は、咲留が買う様子にワクワクしてしまった。

券売機を興味深げに、色んな角度から見てみる。


「瑠樹、押してみるか?」

お金を入れた咲留が、指差すのは170円と光ってるボタン。


「うん。押す」

嬉しくて、ちょっと声が上ずった。


は、恥ずかしい。


ポチっと押せば機械音がなって下の口からチケットが落ちてくる。


ママが生きてる時に、普通の電車に乗った覚えはうっすらとあるけど、地下鉄は生まれて初めてなんだよね。



「ほら。切符」

咲留は落ちてきた切符を拾うと手渡してくれた。


「ありがとう」

「いや。ほら、もう一枚押してくれよ」

そう言われてまだ点灯してる170円の文字を指で押した。


咲留はまた切符を拾う。




切符を手に人の流れに乗って地下へ降りるエスカレーターに乗る。


「危ないから転ぶなよ」

「分かってるし」

背後に立ってる咲留を振り向いて睨む。


子供じゃないんだから、大丈夫だし。


急ぐ人達が私達の立ってる横を足早にかけ降りていく。


動いてるエスカレーターを階段みたいに降りていくんだから凄いな。


しかも、このエスカレーター、長いのに。


日本人はせっかちなんだと改めて思う。



地下鉄の乗り場に来るとそこも沢山の人が溢れてた。


きちんと乗り口の印に添って並んでる辺りは日本人の几帳面さが見てとれる。



「ほら、手を繋ぐぞ。迷子になったら困るからな」

咲留はショップバッグを持ってない手を私に差し出す。


「...あながち間違いじゃないから怖いし」

素直に咲留の手を取る。

私ってば方向音痴だし、咲留と離れるとかなり困るからね。


「ククク..相変わらず方向音痴だもんな」

と笑われ、

「うっさいし」

とそっぽを向いた。


少ししてホームに電車がやって来る。


人の流れに添って車内に乗り込めば、案の定混雑していて。


咲留は私を反対側のドアへと押しやり、私を囲うように両手をついた。


「少しだけ我慢しろよ?こうしてねぇと痴漢に遇うからな」

「...あ、痴漢ね」

そう言えば雑誌で読んだことある。


日本の地下鉄は痴漢が多いって。


ムッツリした、気持ち悪い人達が多いって事よね。


される側の気持ちを考えない大馬鹿者よね。