あの日あの時...あの場所で









買い物したショップの袋は咲留が持ってくれて、もう片方の手で私の手を引いて、少し多くなった人並みを掻き分けて歩く。


お昼に近付くにつれて人は増殖していくようだ。



「まだ、何か見たいものあるか?」

と聞かれ、


「特にないけど?」

と返す。


元々買い物の予定じゃなかったしね。



「だったら、複合スーパー行っても良いか?」

「えっ?」

思わず戸惑ったのは、その場所で柊に再会してしまったからだろう。



「ダメか?無理なら良いからな」

咲留に余計な気を使わせてごめんね?


「ううん、大丈夫。何か欲しい物でもあるの?」

首を左右に振ってから咲留へ視線を向けた。


「あ、ああ。俺の使ってるサーフボードのメーカーの店が在るんだよ」

「へぇ。じゃあ行こうよ」

柊がまた居るなんて決まってないし。


咲留の買い物にぐらい付き合ってあげたいしね。



「おう、ありがとうな」

私に向けた咲留の笑顔に、周囲に居た女の子達は頬を赤らめていた。


あらら、咲留はやっぱりイケメンなんだねぇ。

改めてそう思った。




「じゃあ、行くと決まれば車呼ぶか」

私の手を離してポケットからスマホを取り出した咲留に、


「ここから遠いの?」

と聞く。


この間も車で行ったから距離感がいまいち分かんないんだよね。


「地下鉄で一駅ぐらいだ」

「じゃあ、地下鉄に乗ろうよ」

テンション高めで咲留にアピールする。


日本に来て一度は乗りたいと思ってたんだよね。


こっちの地下鉄は乗った事ないし。


「...地下鉄でか?」

眉間にシワを寄せた咲留は難色を示す。

あれこれと考えてるみたい。


「ねぇ駄目?何かあっても咲留が守ってくれるよね?」

上目使いに小首を傾げる。

これは、私のおねだりポーズだ。

咲留とパパにはこの手がよく効くんだよね。



「...っ..わ、分かった。地下鉄で行くか」

良し良しと私の頭を撫でた咲留。


フフフ...作戦成功だ。


二人で近くに有った地下鉄乗り場へ向かう。


目と鼻の先に地下道へ降りる入り口があったのは、ラッキーだった。